美食倶楽部幹部会(第4話)

 ホリエモンが出所したそうです。
 仕事が休めて、本が読めて、3食もらえて、ダイエットもできて……ちょっとだけ羨ましいですわ。1ヵ月ぐらいなら入ってもいい気がするね。便所にドアさえあれば。
 さて、今日も新企画の説明です。面倒であれば、次回だけ読んで下さい。
 次回は企画を箇条書きをしたものを掲載するので、そのつもりでいてね。
 今日は2話分をまとめて掲載でぇす。



 ゲンの意表をついた提案に思わずNOVが聞き返す。
「チーム戦ですって?」
「そうだ。今回の企画は、チーム戦とする。企画への参加人数にもよるが、2〜3人で1チーム。マス目の指示には、チームの代表1人が従えばいいこととする。こうすることで2つのメリットがあるんだ。1つは、さっきからも上がっているように時間効率を良くし、同じ指示頻発による興ざめを防ぐことができる。そして2つ目だが、どんな人間でも、生理的にどうしてもやりたくないことってのはあるもんだ。例えば俺なら、『両足すね毛ガムテープ抜き』なんてやつだけは、どうにもやりたくない。だが、それをあまり苦にも思わない人間だって、中にはいるはずだ。そんな具合にチーム内で協力することにより、絶対的に不可能な指示に出くわす確率を軽減することができる。まぁへタレ同士のチームになって、お互いに指示に従えない場合には、あきらめて出た目の数だけ戻ってもらうしかないがな。どうだ、チーム戦、おもしろいと思わねぇか?」
「まったくで。お見逸れしました」
 NOVがゲンに向かって一礼したところで、今度はジョイトイが挙手した。
「会長、私から1つよろしいか?」
「なんだ?」
「会長は先程1チーム2〜3人と言われましたな?」
「ああ」
「さっきの話を聞く限りでは、受け皿が1・5倍になる分、2人より3人チームの方が圧倒的に有利となることは必定。その点について、2人チームの背負うハンデを埋めるような補填は、何か考えてらっしゃるのか?」
「無論だ。2人チームと、3人チームでは、キャパが違うからな。2人チームには、『キチガイに刃物カード』をスタート時に数枚、配布しようと思う」
「『キチガイに刃物カード』?」
「いわゆるチャンスカードさ」
 なぜそのままの名称にしなかったのか気になったジョイトイであったが、敢えてその点には触れずに会話を続ける。
「具体的にはどんなのですかい?」
「そいつは言えねぇが、まぁ自分のチームが有利になるものであったり、相手のチームを陥れるものであることには間違いねぇよ。人1人の穴を埋める役割を果たすカードだから、それなりのものを用意するつもりだ」
「なるほど、それなら2人チームに配属されても嘆く必要はありませんな。失礼した」
 ジョイトイが納得したところで、ゲンが周りに呼びかける。
「他に何かあるか?」
「あるある! あるある探検隊やぁ」
 野太い声で、キクチがわめいた。
「なんだ、キクチ?」
「会長、器も脳味噌もミクロサイズのあんたにしちゃ、なかなかよく考えた企画やないかと思う。だが肝心なところが、抜け落ちとりゃせんか」
「なんだってんだ?」
「『素誤露苦』と謳った以上、早くに上がったチームには、それなりの特典があってしかるべきやろ? それでなきゃ、必死に試練を乗り越えて『上がり』を目指す気力が湧かんわ。その辺、はっきりさせとかにゃ、片手落ちもええとこやで」
 キクチの問いかけに、フッとひとつ鼻で笑った後で、ゲンが応える。
「見くびるなよ、キクチ。俺がその辺を考えていないとでも思ったか」
「なんやと! だったら、どないなっとんのか、説明してもらおうやないかい!」
「いいだろう。今回の企画、おそらく3チーム編成になるだろうから、その前提で話をさせてもらう。まずは1着にゴールしたチームに関してだが、優勝チームについては、長くその栄誉を称えると同時に、今回の企画にかかった費用を全額免除とする。つまり準優勝チームと最下位チームの頭数で、企画の費用を受け持ってもらうことになるな」
「ほぉ。なるほどのぅ。しかし、2位のチームとドベのチームが同じ扱いじゃ、2位のチームの連中が、おもしろくないんちゃうか?」
「俺もそう思ってな。最下位のチームには、費用負担とは別に、特別なペナルティを与えることにした」
「それ、どないなペナルティや?」
「拉致」
 思わぬ一言に、それまではゲンとキクチの対話を静観していたNOVとジョイトイの表情が強張った。NOVがゲンに問う。
「拉致って言うと、北○鮮のお家芸のアレですか!?」
「まぁな。……だが、そんなに心配しないでくれ。あの水準でやるわけじゃない」
 あの水準でやったら、大変もないことだ。そんな言葉を何とか飲み込んで、NOVがゲンへの質問を続ける。
「ではどんな形式でやると言うのです?」
「ああ。まずな、最下位のチームメンバーにアイマスクを装着させて、車に乗せる。車は異なるチームの者で、計2台用意する必要があるわけだな。そしてダースベイダーのテーマ曲が流れる中、どこぞかに連れて行かれ、車から放りだされるってわけだ。あとは自力で帰って来てもらう。どうだ、おもしれぇだろう?」
「なるほど、電波少年をやるわけですね」
「端的に言えばな」
 ゲンがNOVの質問をまとめると、今度はジョイトイから質問の声が上がる。
「拉致して連れて行く先は、もう決めているんですかい?」
「いや、俺がペナルティに処せられる可能性もあるからな。決めてはいない。企画終了後に、優勝チームと準優勝チームが相談して決めてくれ」
「ほぉ。要するに樹海のど真ん中に置き去りにされても、恨みっこなしちゅーことやな?」
 ゲンの言葉に目の色を輝かせたのは、言うまでもなくキクチである。ゲンは至って冷静に応じる。
「当然だ。勝った者の言うことは絶対だからな」
「よう言うた、会長! これで俄然、おもろうなってきた! 『素誤露苦』、やったろやないけ!」
 キクチがやる気を出したのは、言うまでもなく、目の上のたんこぶであるゲンを、公式に始末する機会を得たからである。
 彼の真意を知ってか知らずか、ゲンはキクチにはあまり関心のない素振りで、NOVとジョイトイに最終確認をとる。
「キクチはああ言ってるが、2人とも異存はないな」
「御意」
「会長の意見は、倶楽部の総意ゆえ」
 2人の承諾を得たところで、ゲンが高らかに宣言する。
「美食倶楽部新企画、『素誤露苦』、開催決定だ! ……なんじゃかんじゃで、説明が長くなったから、次回の更新時にルールの一覧を載せるから、わかりにくければ、それをプリントアウトして使ってくれ! 会議は以上。今日はご苦労だった!」
『素誤露苦』、カミングス―ン!
(つづく)