美食倶楽部最大トーナメント (第44話)

 本当にご無沙汰しています。
 最近恒例の1ヵ月更新です。このシリーズだけ書き終えれば、いま少しテンポがよくなろうかと思いますので、もう少しだけお付き合い下さいませ。もう準決勝2試合目だからね。



 ゲン敗戦。
 この結果を見届けるや、エブフライの弟子は、結果を報告すべく、師の控え室へと走った。
「先生、只今準決勝第1試合が終了し、ハルロー殿がゲン殿を破り、決勝に駒を進めました」
「ああ、そうかい。やれやれ」
 エビフライがフゥと大きなため息をついた。
「これから試合が始まるのに、ため息とは、どうかなさいましたか?」
 弟子の問いかけにエビフライは、微笑んでみせた。
「こいつはエライことになったと思ってな」
「どういうことです?」
「考えてもごらんよ。一足先に決勝に駒を進めたのは、天然をウリにしているハルローさん。今から僕と戦うゲオルグさんも、これまでの戦いぶりを見るに、まず天然と判断して間違いないだろう。つまり技巧派とでも言うのかな。笑いを考えて、計算し、空気を呼んで必勝のネタを披露するタイプの選手は、僕が最後の1人になってしまったわけだ。このトーナメントにおいてね」
「はぁ」
 解せない様子の弟子に、エブフライは話を続ける。
「いいかい? 笑いのプロが、この世に誕生してからというもの、彼らは総じて計算して笑いを作り挙げてきた。それがどうだろう。世の中で1番おもしろい人間を決める最大トーナメントで、天然2人が幅を利かせている。これは、お笑い史上最大の危機と言えるんじゃないかな」
 エビフライの直接的な説明で、弟子もようやく師のため息の意味を知った。
「で、では万が一にも先生が破れでもした日には!?」
「これまでの笑いの歴史が覆される。計算が天然に取って代わられるのだ。だから私は負けられない。絶対に」
 エビフライが決意を明かしたところで、大会の進行役が彼を呼びに来た。
「さーて、勝ちをもらいに行くか」
 エブフライは決戦のリングへと向かった。 (つづく)