金沢奇行(第1話)

 平成23年3月某日。
 僕は、いつもの旅仲間であるジョイトイ氏と無双祭さんに、次のようなメールを打ちました。
『今年も毎年の恒例となっております美食倶楽部1泊旅行を開催したいと思います。つきましては、打ち合わせを兼ねた食事会を今週末に開きますので、それまでに企画案を練り、当日プレゼンできるようにしておいて下さい』
 自分でもあれこれ考えてみたのですが、これといった魅力的な案が浮かばないので、ここは皆様の意見を拝借しようと試みたのです。
 そして食事会の当日。僕はまず無双祭さんを迎えに行きました。彼が車に乗り込んだところで、僕は挨拶代わりに訊ねました。
「どっか行きたい場所は見つかりましたかい?」
「まぁね。ゲン君、前から日帰りで金沢旅行がしたいって言ってたけど、さすがに移動距離が長くて厳しいかもって、二の足踏んでいたじゃない。俺も金沢に行ってみたかったから、この際、1泊するなら金沢でいいんじゃないかと思うんだけど、どう?」
 無双祭さんの一言で、まさに僕は目から鱗状態。
 そうなんです、僕は前から金沢に行ってみたかったはずなのに、なぜかこのときの企画立案では、そのことを思い出すことすらできずにいたのです。
 無双祭さんの言葉で、あらかじめ自分で考えてきた各候補地をプレゼンする気が、僕にはすっかりなくなりました。つまり、僕も金沢以外の旅行が考えられなくなったのです。
「それ、いいですね! ジョイトイの意見も聞かねばなりませんが、俺の気持ち的には金沢でいいです。ちゅーか、金沢がいいです!」
 そんなこんなで、すっかり気分は金沢旅行になった僕は、ジョイトイ合流後、さっそく金沢旅行を打診します。すると、北陸一の都市である金沢に行ってみたいので、ジョイトイも金沢旅行に賛成とのこと。
 なんでぇ、なんでぇ。食事会が始まる前に候補地が決定しちまったじゃねぇか。これならわざわざ打ち合わせ会を設けなくても良かったぐらいだな。
 そんなことも思ったのですが、もちろんせっかく集まったので、食事をしながら旅行の詳細を煮詰めることにします。
 結果だけ書けば、今回で収まるのですが、理屈を書かないと、なぜそうなったかがわからないので、打ち合わせの様子は、また次週にお送りしたいと思います。
 時間稼ぎじゃないんだからッ! (つづく)