原付の旅① 清水〜甲府220キロ (第2話)

 ゲンです。3ヵ月ほど前から、減量のため深夜徘徊……ではなく、夜にランニングをしています。今夜も走ろうと思って、ランニングシューズを履いたところ、「ネチョ」という、なんとも言えない嫌な感触が……。恐る恐る足を上げてみると、なんとそこには――デンデンデーン デンデンデーン(火曜サスペンス劇場の音楽)――、圧死したゴキブリの死骸が2匹! 
 僕のランニングシューズのかぐわしい芳香と、絶妙なしめり具合に引き寄せられやって来た2匹。そこに偶然にも同時刻にやってきた僕が、間髪入れずに靴に足を滑り込ましたところ、踏み潰してしまった……という悲しい物語でした。
 同時刻に放送されていた某人気映画の主人公が、どこぞやの空港で、「助けて下さい」と叫んでいる裏で、もう1人「助けて下さい」と心の叫びをあげていた男がいたことを、みなさんに報告しておきます。
 はい、文字とはいえ放送コードギリギリの話はこのぐらいにして、続いて原付の旅です。


 パチンコ屋で、後世「平成の桶狭間」と呼ばれるほどの大敗を喫し、9月予算を使い果たしたことで、原付の旅を決意した僕は、まずコンビニに向かって旅の道具を整えることに。近くのファミリーマートに寄って、写るんです(使い捨てカメラ)とパチスロ雑誌を購入。写るんですは、旅先の写真をとるため。パチスロ雑誌は……いえね、そりゃあとから思えば、帰ってきてから買えば良かったと思いますよ。でもなんとなく買っちゃったわけですよ、これが。
 準備が整った(?)ところで、次は行き先です。原付購入時点で、僕には初の遠出は県外へという構想がありました。さらには交通量が少なくて、広大な自然があるところが良かったので、総合的に考えた結果、国道52号線を北進することに決定。
 僕の家は、静岡市清水区(旧清水市)の西端、私鉄電車である静岡鉄道御門台駅の近くにあります。その近所のファミリーマートから旅をスタートさせました。午後2時でした。
 運転手、ジャージ上下のバリバリのパチンコ屋ルックのまま、トゥディは旧東海道を激走。静鉄の入江岡駅付近で、このままのノリで行って大丈夫かと一瞬不安を感じましたが、迷わずダッシュしているうちに、どういうわけか不安は消えていきました。さつき通りを東進し興津に入り、スタートから数十分で52号線に合流。52号線を進むにつれ、徐々に民家が減っていき、やがて両脇を山が覆うように。思ったとおり大自然の合い間に造られた道路をひた走るのは、気持ちのいいものでした。但し、追い越したりすれちがう二輪車は、みんな中型か大型で、原付は僕1人。それでも気合と根性があれば負けない(科学的根拠はありません)と思いつつ、原付を走らせているうちに、いつしか僕は山梨の県境を越えたのでした。 (つづく)