原付の旅② 清水〜井川120キロ (第4話)

 只今より、異種格闘技戦を行います。青コーナー、駿河湾が育んだ気ちがい犬! ゲン2段(講道館)! 赤コーナー、宅地建物取引主任者試験(国家資格)! レフェリー、ジョー樋口
 ゴングが鳴った! 試合開始です! あっと、宅地建物取引主任者試験が、いきなりラリアット! ゲン、まともに食らった! ダウン! 宅地建物取引主任者試験、容赦なく倒れたゲンに四の字固めをかける! ゲン苦しそう! ギブアップかッ!? ギブアップかッ!?
「ギブアップ……」
 ゲンまさかのタップ!
 ――只今の試合、21秒、足四の字固めにより、宅地建物取引主任者試験の勝利です。


 ……どうも。プロレス実況風にお送り致しました、僕VS日曜日の試験でした。まぁ要するに、あえなく瞬殺されたということです。来年また頑張りまーす(立ち直りの早さは大したもんだ)。
 しかしッ! ここでこのまま引き下がっては、僕の沽券(そんなものあるのか?)に関わります。だから宣言します。次の日曜も試験があるのですが、もし、そちらの試験も落ちるようなことがあった場合には、
 横溝正史著『八ッ墓村』のプロローグに出てくる殺人鬼の格好をして、職場近くにある曰くつきの大木を切り倒してやります!
 以上!
 なに、泣きながら土下座する僕の姿が目に浮かぶって? そんなわけないでしょッ!


 さて、気を取り直して小ネタに(今までのは何?)行きましょう。今日は仕事の関係で、たくさんのおじいちゃん、おばあちゃんと、バスでお出かけして来ました。う〜ん、ファンタスティック。
 その帰りのバスでの話。僕の乗車したバスは、3箇所に停車して、おじいちゃん、おばあちゃんを降ろす予定だったのですが、事件は2つ目の停車場所で起こりました。
 見送りを終えた僕は、バスの車内に入り、ガイドさんに告げました。
「次は○○までお願いします」
「はぁ……」
 なにやら不可解な様子。何事かと思って、振り返ると……ウワォッ! なんと誰ひとり乗客がおらぬじゃありませんか! みんな、今のところで降りちゃったのね……(悲)。あまりの気まずさに、僕も降りてしまいたかったのですが、既にバスの入り口は閉まり、走りだしています。やいやい。
 どうしようもなくなった僕は、顔を引きつらせながら震える声で言いました。
「……僕を○○前まで乗せて行ってください。お願いします」
「はい……プ」
 ガイドさん、明らかに笑いを堪えています。
 空気に耐えられなくなった僕は、その場を離れるため、お客さんの忘れ物チェックをすることに。
 すると、ありました、ありました。1番前の座席の下にサンダルが。やれやれ、(行き先が)履物を脱いだり履いたりするところだったから忘れたか。
 そう思った僕は、サンダルを掴み上げ言いました。
「ああ、忘れ物がありましたねぇ。あとで言ってくるかもしれないから、預かっておきますね」
 僕の言葉を聞くと、ガイドさんは震える声で僕に告げました。
「……それ、私のです」
 ああ、やっちまったのかい、俺のキンニク。
 ――その後のことは、あまりよく覚えていません。ただ完全に止まっていないバスから、入り口が開いた瞬間、飛び降りたことだけは、おぼろげに覚えています。アクション映画でもないのにねぇ。
 ただ僕のナイトメアは、これで終わりませんでした。その後、職場の方々と話しているうちに、僕の乗車したバスのガイドさんが、うちの職場のエライさんの娘だったことが、判明した次第です。アワワワワワ……
 明日から僕の通り名は、『海道一の馬鹿者』で確定ですね。ハァ、秋の夜風が身にしみらぁ。
 そんなこんなで、ダブル小ネタのあとで恐縮ですが、本編である原付の旅をどうぞ!


  再出発してすぐに土産物屋を発見。なにか記念に買って行こうかなと思って寄ってみると……閉まってる。おいおい、まだ4時過ぎだぜ。ちっと冗談が過ぎるなぁ。しばらく茫然と立ち尽したあと、再び原付にまたがった僕の背中は、おそらく泣いていたと思います。その後、また少し進んだところで、そば屋を発見しましたが、ここも閉まっていました。いやぁ、さすが井川さん。笑いのツボを、よく心得てらっしゃる! ……ちくしょう。俺、そば好きなんだよ。楽しみにしてたんだよ……。
 すっかり引きつり笑いになったところで、今度は井川大仏の標識を発見。なんでもいい! とにかく俺を満足させてくれ! ということで突撃。ちょっとした丘の上にあるので、原付では直接行けず、歩いて行くことに。なんだか無性に楽しくて、笑いながら走って行ったことを覚えています。このぐらいからリアルに壊れかけていましたね。
 山頂にて井川大仏を発見。なかなかの大きさで見事でした。写るんですで激写の後、来た道を戻った際、(恒例の)道を間違えて、原付を置いたところとは、また別の入り口に出てしまったのは、秘密の話です。入り口、2つも3つもいらないでしょーがッ! 
 逆ギレするものの、なんとか無事に原付をおいたところに戻ることに成功した僕は、さらに井川の街を疾走しますが、これと言ったスポットは見当たらず、街の外れでUターン。午後4時半。僕は帰路につくことにしました。それにしても、ダムに始まり大仏まで、1人の観光客ともすれ違いませんでした。
 ……我、来る時間帯を過てり。
 次回、原付の旅②、大盛り上がりの(はず)最終回です! (つづく)