男レース 三島〜清水60キロ (第14話)

 緊急開催! 地上最低ラーメン屋決定トーナメントッ!
「みんな! 静岡市近郊で1番マズイラーメン屋を知りたいかッ!?」
「オオオオ(←誰?)!」
「私もだッ! 私もだッ、みんな! エントリー店、紹介ッ!」
 ……と思ったけど、思いっきりバッシングなってしまうので、ここには書けないですね(笑)。
 とりあえず候補が4店舗あるので、気が向いたときに行って、どこが1番マズイか決めてきますよ。とは言ったものの、マズイとわかっているラーメン屋に行くのは、気が引けるな……。そうだ! 僕の指示通りに誰か行って来て下さい(←最悪だ、こいつ)! ……嘘ですよ、嘘。気長にやりますよ。結果が気になった方は、1年ぐらい経ってから聞いてみて下さい。それまでには何とか周りきる!
 あ、そうそう。『ここもマズイ!』 なんてコメントが寄せられると、そこにも行かなけりゃ行けなくなるんで、やめてね! おい、ホントにやめろよ! ……いや、キレてないすよ。俺、キレさせたら大したもんだ。
 さぁ、またもやパクリが炸裂したところで、だらだらとホントに長い男レースにゴー!


 蒲原駅からジョイトイがスタートしてしばらく後。先導していた僕は、ジョイトイのペースが格段に遅くなったことに気付きました。
 もしや限界かッ!?
 ここで彼にリタイアされたら、僕にも清水まで1人で走り抜く気力はありません。すわ一大事! まさかと思って振り向くと、彼は建物の日陰の部分を選び選び走っていただけでした……。
「てめぇ、この野郎! 何をチョロチョロしてんだ! 男なら潔く真っ直ぐ走れッ!」
「少しでも体力の温存を計りたいんだよッ!」
 正直、この辺りまで来ての怒鳴りあいは、これまでどこか頭の片隅にあったブログを盛り上げるがためのショー的な罵りあいではなく、本能によるものでした。要するにマジ喧嘩だったわけですね。
 なにはともあれ、3時50分、由比駅に到着。
 突然のカミングアウトになりますが、実は僕、富士駅あたりからずっとブルーだったんです。まぁ企画自体がブルーにさせてくれる企画ではある(苦笑)のですが、それを踏まえた上で、なおかつブルーだったのです。
 その理由、それは由比〜興津間の走者が自分であることが判明したから。由比〜興津間を僕が恐れる理由は単純明快。全区間中、もっとも距離があるからです。
 とりあえず由比駅横の公園で小休憩を取ることにした僕達。ジョイトイがトイレにいったところで、僕はベンチに横になりました(一瞬、カッコイイイメージがありますが、ほとんど浮浪者です)。心を落ち着けていると思った皆様は大間違い。
 畜生、なんでこの区間ジョイトイじゃなくて、俺なんだ! ……と真剣に考えておりました。 ホント、もう犬畜生にも劣りますよ、僕は。
 それでも吉原〜富士間を走った彼が、由比〜興津間も走ったとあっては、明らかにMVPをもっていかれるばかりか、孫の代まで、
「男レースが完走できたのは、俺の活躍によるところが大なのさ」
 と吹かれることは、間違いありません。そして彼は、そういうことを平気で言う人です。それだけは避けねばならん! その一心で、僕は立ち上がりました。もう電車に乗ろうぜ。この一言を噛み殺しながら。
 人間、窮地に追い込まれたときに発揮されるのは、愛とか勇気とか友情とか根性ではなく、ねたみ、嫉妬、恐怖といった負のエネルギーなのだよ。あっ、なんかすげぇ嫌なブログになってる……。でもそれが真理なんですよ、きっと(俺だけだったら、どうしよう?)。
 ジョイトイが戻ってきたところで言いました。
「行こうか」
「ああ」
 僕は走り出しました。男の闘い、開始! (つづく)