男レース 三島〜清水60キロ (第16話)

 今日は親戚の兄さんこと、サクライガーさんのお店に行って来ました。
 その際、以前に話題になったまずいラーメン屋の話に。
「どうだい? 一仕事、終わったら、俺の知っているこの近くのマズイラーメン屋に行ってみるかい?」
 ちょうどこの日、外食するつもりで家を出て来た僕でしたが、何も花金にわざわざマズイものを食わなくてもなぁとも思うわけです。
 しかし! 僕は世界平和よりも、笑いを優先させなければならない芸人超人! たとえこの身が朽ち果てようとも、笑道を追求せねばならぬ!
「行きましょう!」
 こうして僕達2人は、マズイラーメン屋へと足を向けました。道中、サクライガーさんが、僕に忠告します。
「今から行くラーメン屋は、本当にマズイ。たぶん他の客はいねぇよ」
 ……日曜に食った味のない味噌ラーメンに比べれば、ちったぁ食えるだろう。僕は高をくくっていました。
 入店。サクライガーさんの予想どおり、他の客の姿はなし。畳に寝転んでいる親父……やばいゾっと。なにはともあれ、しょうゆラーメンを注文。
 数分後、目の前に並べられたラーメンに、僕は驚愕しました。
 臭い! 臭いんです! ラーメンが異臭を放ってるんです! マジでこれを食わなきゃいけないの? 真剣にそう思えるぐらいの臭みです。迫り来る異臭ラーメンと、込み上げてくる吐き気! 内外両面から襲いくる敵と戦いながらも、何とか完食すると、僕らは早々に店をあとにしました。
 ハッキリ申し上げて、わざとまずいラーメンを作っているとしか思えないような空前絶後の味でした。カップ麺の方が、普通に何百倍も美味いもの。日曜の味のないラーメンが、臭みがない分、だいぶマシに見えましたね。ともかく、ラーメンというものに始めて畏怖を覚えました。
 あそこよりマズイ店は、そうそう見つからないでしょう。もしどうしても行ってみたい奇特な方がいたら、連絡をくれれば、こっそり場所を教えますよ。しっかりと生命保険に入ってから、食いにいってみて下さい!
 サクライガ−さん、おごってもらったのに、散々な書きっぷりでごめんなさい。しかし、嘘は書けぬでござる。
 ちなみにサクライガ−さんのブログにも、彼の視点で、今回のラーメンリポートが乗っているので、見てもらえるとおもしろいと思いますよ。
 さぁ、続いて走る男達の話です!


 興津川河川敷を脱出後、52号線を抜け、5時5分、とうとう僕らは興津駅へとやって来ました。さっそく写真撮影に移ろうかと思った矢先、意外にも車の往来が激しかった(駅にいる僕を、通りを挟んで撮りたかった)ので、僕はジョイトイに告げました。
「おめぇ、間違っても車が来ているときに撮るなよ」
「わかってるよ」
 幼稚園児にすら、言わなくていいようなことなのですが、ミスターアンビリーバボーの異名を持つ、ジョイトイには用心に用心を重ねて接せねば。
 注意を促したあとで、僕は駅構内に向かってダッシュし、テキサス・ロングホーン(スタン・ハンセンがやるやつね)をかまします。
「ウィィィィィィ!」
 もうここまで来ると、周りの目なんて気にならなくなるものですよ(俺だけか?)。こうして、写真撮影を終えたのち、ジョイトイがラスト・ランに入りました。しかし、このとき彼はまだ知りませんでした。現像された写真を見た僕に、散々怒鳴り散らされる悲しい未来を。
 車が来ていないときにシャッターを押せ。確かに彼は、僕の諫言を忠実に聞き入れ、車が来ていないときにシャッターを押しました。だがよぉ、まさかよぉ、人が目の前を横切っているときにシャッターを押しちまうとはよぉ! 
 冗談かとお思いのみなさま、この話、作ってませんよ。もしかしたら彼は、とても可哀相な人なのかもしれませんね……。どうぞ、今後、彼を叱らないでやって下さい。
 なにはともあれ、男レースは興津〜清水間に突入しました。この頃になると、既に日が沈んでいたので、あながち走るのが苦にならなくなってきました。もちろん、体力的に辛いのは事実なのですが、暑さが和らいだことで、幾分楽になったように思えます。
 職場の同僚とすれ違う不運に恵まれる(この競技をやっているときは、すんごい顔してるから、知り合いには会いたくないのです)ものの、ジョイトイは最後の力を振り絞って力走。やがてビル群の中にある清水駅へと到着したのでした。
「よくやった、ジョイトイ!」
「あとは任せたぞ」
「おうともよ」
 あれ? 俺の方が1区間、多くねぇか? ……そんな愚痴が喉をついて出そうでしたが、大トリの座を明け渡すのも嫌なので、黙っていることに。やっぱ俺じゃなきゃしまらないですよねぇ、みなさん!
 次回、男レース、物語はクライマックスへ!
 あ、でもその前に1つ。ジョイトイ清水駅でも、僕が全身収まるように写真を撮れと言ったにもかかわらず、5分の3ほどしか入っていない写真を撮ったよ。
 今日から彼の姿を見かけたら、気軽にカリスマカメラマンと声をおかけ下さい。(つづく)