素誤露苦 (第15話)

 ついさっきのことです。椅子の上でアグラをかいて、ブログの原稿を書いていたときのこと、僕はあることに気がつきました。左足の親指の爪が、真っ黒に変色しているじゃないですか! 別にどこかに強打したわけでもないのに!
 こっ、これは! まさか壊死!? 何か悪い病気ちゃうんか!?
 その後、親に散々死ぬだのなんだのほざいた後で、気づいたんですけどね、ただの汚れでしたよ。ええ、死ねと言われました。
 さぁ、死ねと言われても、明るく楽しく書き綴った僕のブログをご覧下さい。



 96°のウオッカと対峙するも、ダミアンの奮闘により事なきを得たキクチチームに引き続き、NOVチームの第8投です。出た目は5。進んだ先の指示は、『実際に使ったことのある甘い言葉を囁く。相方は甘いと叫ぶ』。つまり、実戦(!)で使用したことのある台詞で、スピードワゴンのコントをやれと言うわけです。これは屈辱ですね! さぁ、やってもらいましょう!
 若干の打ち合わせの後、ジョイトイ&NOVさんの急造スピードワゴンお披露目ですッ! まずはジョイトイが火蓋を切ります(かなりのうろ覚えですので、事実と異なる点があったら、お許し下さいませ)。
「設定はオフィスの給湯室で――ああ、○○さんも、今、休憩ですか?」
「ええ、ジョイトイさん」
 応じたのは、もちろんNOVさんですので、あしからず。
「最近、毎日残業で疲れますね」
「本当ですよね。あ、もし良かったら、ウイスキーボンボンを食べませんか? ちょうど手に入ったんですよ。疲れているときには、甘いものがいいって言いますし」
「いえ、僕は根っからの下戸ですので、遠慮しておきます」
「そうですか」
「しかし、残念です」
「え?」
「あなたが僕と付き合ってくれれば、僕は必ず、そのウイスキーボンボンよりも、あなたを酔わせることができるのに(ここで指パッチン)」
「あっまーいッッ! 甘すぎるよ、ジョイトイさん!」
 以上、ジョイトイとNOV氏による甘いコントでした。
 会場を包んだのは、まさか本当にそれをやったのかという懐疑的な空気。僕は全員を代表して、ジョイトイに問い詰めました。
「おめぇ、本当に今のを女相手にやったの?」
 彼は悪びれず応えました。
「やるわけないじゃん。馬鹿だなぁ」
 え、それって根本的に指示無視じゃん。怒髪天を突く! 僕の怒りの追及が始まります。
「おい! それは、おかしいだろうよ。実際に使った言葉を言うからこそ、恥ずかしくて罰になるんだろうが」
「そうは言っても、現実に『甘い』なんて叫ぶシチュエーションなんて、あるわけないだろうが」
「だから『甘い』は後からついてくるもんであって、お前が実際に使った手段をここで暴露すればいいわけ!」
「んなこと、できるわけないだろう」
 冷戦時代の米ソのような緊迫した空気が、会場を包み込みます。こいつはいかんと思った他のメンバーが、慌てて僕をたしなめます。
「まぁまぁ、ゲンさん。コントとしては、面白いデキだったわけだから、この辺で堪忍してやったらどうですかい?」
「むむぅ」
 これ以上暴れては、企画の雰囲気をブチ壊す気がして、ここは僕が引きました。まぁそこそこの誠意も見れたし。俺って大人ですね!
「いいでしょう。朝廷の許可(?)があるので、ここは許しましょう。だがジョイトイよ、覚えておけ! 貴様のような二枚舌野郎は、いずれ神の天罰が下るであろう!」
 そんなことをほざいているうちに、気がつけば僕チームの番でした。 (つづく)