さよならマーチの旅 (第5話)

gen-19812006-08-09

美食倶楽部会員名簿⑤ ダミアン


 美食倶楽部の特攻隊長。道を歩いていたかと思えば、突然爆竹に引火してみたり、ある台風の日にジョイトイ宅の2階屋根から小便を垂れたりと、キワモノ揃いの美食倶楽部においても、ひときわ目立つ存在である。7年前、東京は浅草寺の境内で、美食倶楽部の笑いは世界標準であることを証明するため、上半身裸となり、その上に鳩の餌をおき、鳩の群の中に寝転がった。鳩、ダミアンに集中砲火。見事、韓国人の大爆笑を奪ったものの、子供ずれの親からは、子供に見てはいけないとの怒号が飛び交った。その後、「あいつら(鳩)は、獣なだけに、容赦ないっすわ」の一言は、居合わせた会員達の胸に深く刻まれた。
出演作:素誤露苦



 R1を西進し、安倍川を渡ったところで、僕らは、ちょっとした旅のお供を買い揃えるため、コンビニに立ち寄ることに。
 駐車場に車を停めたところで、僕が言います。
「旅の朝食は、ちょっとオシャレに牛丼屋(ジョイトイの名言)が、僕らの鉄則なので、ここでは朝食は買わなくてもいいですよね。まぁ必要最低限のものを買い揃えて来て下さいな」
 数分後、飲み物やらガムやらを買って車内に戻って来る面々。しかし、ホリコの手には、何やら見慣れぬ物体が……。
 僕はおそるおそる訊ねます。
「な、なにそれ?」
「ああ、ガンダムの武器のプラモだよ」
 ええッー!? なぜこれから滋賀を目指す時分にガンダムのプラモッ(しかも武器)? 大爆笑の僕にクロさん、やや引きつり笑いの無双祭さんでした。もしやすると、この男、ジョイトイを超える逸材やもしれんわッ!
 そうこう言いながら、再出発した僕らは国1バイパスに乗って、一路西へ。
 この頃、ようやく日が昇って、あたりの景色が明確になって来たのですが、悲しいまでの曇り空に、僕が思わず呟きます。
「俺、先週の仕事中から、今日のことスゲェ楽しみにしてたんだけどさ。俺のイメージじゃ、晴れ渡った青い空から降り注ぐ眩しいサンシャインの中を、マーチがかいくぐって進むような絵を想像していたんだけど……」
「悲しいまでに灰色一色だね」
 ステキなツッコミを入れてくれたのは、無双祭さんでした。しかし、せっかくの旅です。いつまでも沈んだ気分ではいられません。自分自身に言い聞かせるように、僕は言います。
「きっと、琵琶湖まで行きゃ、晴れてるでしょうに」
「いやぁ、西の方がこっち(静岡)よりも天気が荒れているって聞いたから、そっちに向かって進んでいる以上は、おそらく……ねぇ」
 言いにくそうに、そう言ったのはクロさん。
 ええ、なんとなく僕も、そのことには気づいていました。ただ現実を見据えるのが怖くて、ちょっと逃げてしまっていたのです。
 ありがとう、ロベルトッ! 俺、負けないよ!
 マーチはバイパスをひた走ります。
 なんとなくキャプテン翼ネタで落としたところで、次回に続きます。 (つづく)