さよならマーチの旅 (第7話)

美食倶楽部会員名簿⑦ ラフィート


 美食倶楽部会員。仕事が超多忙を極め、なかなか企画への参戦が叶わないものの、古くから美食倶楽部に席を置く古参。丁寧で穏やかな物腰が特徴。なんでこんな人がキワモノ揃いの美食倶楽部に長年在籍してくれたのか? 今世紀最大の謎である。今日も痛々しい表情で、会員達の奇行を見守る。
出演作:なし



 浜名バイパスを西進、西進。湖西市を越えると、いよいよ愛知県に突入です。
 この頃になると、僕らの旅に一筋の光明が。なんと絶望視されていた天候が回復し、空が晴れ渡ったのです。
「いやぁ、きっとジョイトイが祭壇を造って、そこで僕らのために、祈ってくれているんですよ」
 僕らの旅では、天気の良し悪しは、もれなく不参加の人のせいにされます(笑)。会員各位、それが嫌ならば、参加せよ!
 とまぁ、せっかく晴れ渡った天気ですが、人間てのは贅沢な生き物でしてね。このあと旅はずっと晴天に恵まれたのですが、恵まれすぎた感が否めず……暑い、暑いと、どこに行っても、ぼやいている始末でした。朝はあれほど、晴れろ、晴れろ、言ってたのにね。
 暑いぐらいに晴れ渡った中、マーチは快走を続け、午前8時、国道沿いのサークルKで、休憩を兼ねて、物品を補充することになりました。
 みんなが思い思いの物を購入する中、僕が買うべきものは、ただ1つ! さぁ、みなさんは、僕が欲したものが何かわかりますか? そうだね、プロテイン……なわけなく、僕が欲しかったのは、眠気覚まし! みんなのトークがあるから我慢できたけれど、浜名バイパスで眠気の第1波が襲ってきたときは、もうどうなることかと(苦笑)。第2波が来たら、KOは必至です! その前に対策を立てねば!
 パッと、すぐに閃いたのは、ブラックコーヒーやらブラックブラックガムですが、あの程度のものでは、僕の睡魔に対して気休めにしかならないのは、僕自身よくわかっていました。即効性があって、よく効く眠気覚ましでなければならん! そう考えた僕が、向かったのは、栄養ドリンクコーナー。すると、ありました、ありました、『ブラックリゲイン』やら、『眠眠打破』といった眠気対策薬品が。ここは迷わず、こいつらを数本購入です。
 とはいえ、このときは覚醒していたので、第2波が訪れるまでは温存することにして、僕はコンビニを発ちました。
 その後、またもや延々と国1を西へ走っていくと、『桶狭間古戦場』なる標識が。朝の4時に静岡を発って以来、食事と買い物以外は、延々と移動してばかりいたので、通り道だし、ちょっと寄ってみようとの話になりました。
 実は僕、小学生の頃、戦国時代が大好きな少年でして、中でも織田信長が一押しでした。今は昔ほど、歴史好きでもなくなり、すっかり知識も衰えたのですが、それでも昔取ったなんとやらで、桶狭間と聞けば心も躍るわけです。
 通り道にあってくれて、ありがとう! 狙うは義元の首1つじゃあッ!
 僕はノリノリで、ハンドルを切りました。 (つづく)