さよならマーチの旅 (第9話)

gen-19812006-08-18

美食倶楽部でないお友達② ゲオルグ


 165センチ、90キロの巨体の持ち主。美食倶楽部の前身である柔道部が、練習終了後の黙想をしている最中に、「おめぇら、オウム(真理教)みたいだな! イイッヒィ!」とのたまわりながら、柔道場にカチ込んでくるも、部長ゲンの一本背負いでマットに沈んだ(ジョイトイ説)。以後、美食倶楽部の友情パワーに魅せられて、美食倶楽部入りすることなどはまったくなく、美食倶楽部と長年に渡り血みどろの抗争を繰り返すことになる。その後、その筋の人となるものの、愛する女をタバコのせいで失った彼は、その悲しみのゆえ、とうとう無想転生をまとったのだった……。もうわけがわからねぇ。
出演作:なし



 はてさて、旅の最重要事項とはなんぞや?
 オモシロスポット?
 綺麗な風景?
 ……確かにそれらも、旅の楽しみではございます。しかしね、なんたって、これだけしょっぱい旅(あーあ、言っちゃった)をしているとなりゃ、唯一無二の楽しみは、食事でございましょうよ(笑)。他には考えられん!
 そんなわけで、僕が昼食の話題を切り出します。
「そろそろお昼ですねぇ。どうします、岐阜でお昼を食べちゃいますか?」
「それでもいいけど、せっかく滋賀を目指すからには、滋賀の名物を食べたいよね」
 問いかけに応じたのはホリコ。他の2人も同意の様子。僕自身も、その気持ちが強かったのですが、新潟の旅と同様、『昼飯の時間帯を逃した挙句、それっぽい店が休憩に入ってしまい、空腹に耐え切れず、最終的にファミレスへ』シンドロームが怖かったので、あえて口にしたのです。が、全員、滋賀で昼食との強い気持ち(笑)があったことと、時間的に12時を過ぎていなかったこと=滋賀に着く頃でも飯屋は開いていることを考え、昼食は滋賀で済ませることを決断。岐阜の街道沿いに連なる数多の飯屋を横目に、マーチは一路滋賀へ。
 そんな中、僕が振る話題は、もちろんこれ。
「で……滋賀名物って何よ?」
 一瞬、沈黙する車内。そうです、僕らは昼食に滋賀名物を、と息巻いたものの、誰1人として、滋賀の名物を思いついてはいなかったのです(苦笑)。(僕を除いて)比較的賢い人達を集めたはずなのに……。
 後部座席の優秀な参謀、無双祭さんとクロさんが、僕の地図帳(各地の各種情報は載っているのですが、肝心の道は至極見辛い困りものです)を開きます。無双祭さん曰く、
「あー、滋賀は日本でパンの消費量が1番だって」
「へぇー。トリビアとしては十分だけど、昼飯に食うには役不足だよね」
「そうだよねえ」
 僕の解答に、無双祭さんも同調。つづいて、クロさん曰く。
「鶏肉の消費量は、全国で5番だって」
「……それも何かピンとこないよね」
 八方塞かと思った矢先、天啓に導かれたように、僕の口からある言葉が発せられました。
近江牛……」
 本当に無意識だったんです。なんで近江牛と発したのか、今でも覚えていないので。それはともかく、僕の発した一言で、車内のみんなが一斉に相槌を打ちました。
「それだッ!」
 食べ物のことになると、本能で正解を導き出すのが、高橋元太郎うっかり八兵衛)イズム最後の継承者、俺ッ! (つづく)