さよならマーチの旅 (最終話)
本日、『さよならマーチの旅』、最終回でございます。
えー、前々から申し上げていたとおり、今日はちょっとした趣向をこらしてみたので、楽しんで頂ければと思います。たぶん見てもらえればわかると思うのですが、わかり辛いと困るので、念のため、あらかじめ種明かしを。
今回、僕が用いた趣向とは……ジョイトイ視点!
時を遡る事、数時間。僕ら旅班が、天竜のうなぎ屋で夕食を食べ終えたぐらいからの彼の視点で物語をお楽しみ下さい。
ではではどうぞ!
俺の名は、ハルロー・オブ・ジョイトイ。美食倶楽部の重鎮だ。
会長ゲンが、思いつきで始めたブログで、笑いを求めるあまり、あることないこと書いたせいで、すっかり天然ボケのキャラクターが染み付いてしまったが、本来はニヒルなツッコミキャラだ。読者のみなさんには、そこのところを勘違いしないで欲しい。
そんな不遇を囲っていた俺のもとに、先程、朗報が入った。
俺をおいて琵琶湖へ行った連中に、わざわざ気を使って、メールを打ってやったら、意外な文面が返ってきやがった。
『ゲンさん、鼻血による大出血で意識不明。うわ言で、ジョイトイに土産を届けねばと、何度も繰り返す始末(涙)』
ゲンが意識不明だと!? ……ククク、ハハハ、アッーハッハッハッ!
気がつくと、俺は高笑いを上げていた。鼻からの大量出血。意識不明。もはや助かる見込みはあるまい。おそらくヤツは、このまま死ぬだろう。
いよいよ、俺の時代が来る! 俺は確信した。
ゲンが2代目美食倶楽部会長に就任してからの10年間は、俺にとって、悪夢のような年月だった。俺の持ち味である、社会風刺を利かせたピリリと辛いツッコミをしようものなら、つまらねぇことを言うなと、散々こけにされ、挙句の果ては、至高の天然扱い。俺は来る日も来る日も耐えた。人知れず泣いた。
だが、そんな苦渋の日々も、今日で終わりを告げる。
ゲンが死んだとなれば、美食倶楽部の3代目は俺しかいない。本来なら、副会長のキクチが会長職を継承するのだろうが、今現在、ヤツは群馬に在住しているから、静岡に本拠を置く美食倶楽部の会長にはなりえない。となれば、重役のNOVか、俺が会長職を引き受けることになるのだが、これまでの実績を順当に考えれば、俺が会長で反対するやつもいまい。
俺が美食倶楽部の会長になった暁には、これまでのゲンが敷いた『笑い至上主義』は、即撤廃する。そしたらば、会員にはテニスのラケットを1人1本購入させ、爽やかなテニスサークルでも目指そう。
これでようやく美食倶楽部をまともにできる。俺の目指したものに。
俺は、嬉しくて仕方なかった。
だが手放しで喜ぶのは、他の会員達の反感を買いかねない。俺はホリコに電話をして、心配しているフリをすることにした。
「あ、もしもし? ホリコか……」
電話を終えた。手前味噌だが、なかなか迫真の演技だったように思える。ホリコも言葉を失っていた様子だった。思わず口元が緩んだ。あとはゲン死すの報告を受けるだけだ。香典には500円も包んでやれば、尻の穴ミクロマンのヤツは、気持ちよく成仏するはずだ。
今夜は気分がいい。
俺は普段は飲まない酒を飲むことにした。
つまみは、買いに行くのが面倒くさいから、ピザでも頼んで持ってきてもらおう。多少値段は張るが、今日はいいだろう。
洋酒の水割りを作りながら、俺はピ○ーラにTELを入れた。
土曜のせいか。混み合っているから、しばらく時間がかかるとのことだったが、俺は迷わずにピザを注文した。なにせよ、めでたい。少しぐらい待たされることなど、どうにも思わなかった。
1時間ほど、好きな音楽を聴きながら、ちびちびとグラスを空けていると、とうとうインタフォンがなった。
ようやく、ピザの到着だ。
俺は颯爽と玄関へと走り、ドアを開けた。
そこに立っていたのは、ピザ屋の店員ではなく、忌まわしいあの男だった。
「おう、ジョイの字! 琵琶湖名物、北陸饅頭でござーい!」
「ギャァァァッッッッ!!」
俺は心の底から悲鳴を上げた。
なぜだ? なぜ死んだはずのヤツが、目の前に……。
俺の悪夢は、これからも続きそうだ……。 (さよならマーチの旅 完)
さよならマーチの旅 スタッフ
CAST:ゲン(運転担当)
ホリコ(ガンダムプラモ担当)
無双祭(地図担当)
クロ(企画のブレーキ担当)
ジョイトイ(友情出演なのにオチ担当)
文章:ゲン
写真:ゲン、ホリコ
シリーズ構成:ゲン
テーマソング:『あー夏休み』
企画:ゲン、無双祭
制作総指揮:美食倶楽部