キクチ・クエスト (第9話)

 なんか家に僕宛てで、住所と名前を書いて返信すると、400万オーストラリアドルが当たるといった素敵なお手紙が来ました。
 どんな詐欺かはともかくとして、どこから個人情報が漏れたのか? 恐ろしい世の中になったものでございます。
 余程かわいそうな人でない限り、引っかかる人もいないかと思いますが、もしも引っかかったら、その後、どんなことになるのか……気になりますね。ジョイトイ先生に期待しましょう。
 ではでは、本日のキクチ・クエストへ。
 奇跡が起こります!



 館林インター出口を左折すると、そこは国道354号線。道なりに進んで行くと、ちょっとした賑わいをみせる街になってみたり、田園風景になってみたり。地方都市にありがちな街道沿線のパターンでした。
 そんな中、我々はキクチに指定された『東小泉駅』を目指します。ええ、お優しいキクチは、我々に○○線の東小泉駅ではなく、ただ東小泉駅とだけ教えてくれたのです。殺すぞ、おい。
 それでも我々には、カーナビという心強い味方がおります。余裕綽々で東小泉駅を検索すると、なんと……検索できません、との表示! キテハアッ! 挙句の果ては、キクチの言っていた方向と真逆の方面を案内し始める始末でした。土地勘のない僕らには、かなりの危機的状況!
 運転席のクロさんが僕に言います。
「どうしようか?」
「キクチを信じるか、ナビを信じるかですわな……」
 ナビが嘘を言うはずもないと思いつつも、普段から静岡〜群馬を往復しているキクチが、インターを出てひたすら左と言ったからには、それが違っているとも思えません。……ヤツが左と右を勘違いしていない限りは。
 とはいえ、夜の地元で普通に道に迷うジョイトイなら左右を間違える可能性はあっても、腐っても大学院卒のキクチが単純ミスをするとは、いささか考えられません。
 僕は決断しました。
「ここはキクチを信じて、道なりに進みましょう」
 こうして、キクチを信じて、ひたすら道を進む僕ら。しかし、『大泉町』との文字が標識に出ることはあっても、『小泉』の文字は一向に表れません。
 やはりナビを信じておけば良かった……。
 疑心暗鬼の後、そんな気持ちが強くなった次の瞬間のことです。奇跡の扉が開かれました!
「あ、キクチだッ!」
 クロさんが叫びました。
 なんと僕らが走り過ぎた交差点で、キクチが信号待ちをしていたと言うのです。一瞬のことだったので、僕は確認できなかったのですが、確かにキクチが居たとのこと!
 すぐ近くにあった開店前の本屋の駐車場に車を停めて(無断駐車)、僕らはキクチを追いかけます。先程、ヤツを見かけた歩道橋のところまで来ると、確かにそれらしき後姿が見えました。
 僕は携帯を手にすると、彼に電話をしました。 (つづく)