キクチ・クエスト (第10話)

 風邪を引きました。
 今度のは、腹に来ました。
 お客さんのところにお邪魔しているときでも、奴等は容赦なく襲って来ます。その痛みたるや、その場で脱糞してしまった方が楽なのではないかと思ってしまうほどの強烈さ。
 そんな肛門がリミット・ブレイクした男の旅をご覧下さい。



 たまたま通りかかったキクチ似の男は、本当にキクチなのか?
 携帯を握る僕の手にも力が入ります。
 間もなく。キクチがTELに出ました。
「もしもーし」
 相変わらず、間の抜けた声で電話に出たキクチに、僕が指示します。
「おい、キクチ。後ろを振り向いてみろ!」
「はぁ?」
 すると、僕らの視線の先で、携帯で話しながら歩いていた男が振り返りました。やはり交差点ですれ違ったのは、キクチだったのです。なんという偶然(本当に仕込みじゃありません)!
 僕らの姿を見ると、彼は照れくさそうに、こちらに向かって歩き始めました。
 すると、その態度を見たNOVさんが憤怒。
「なんなんすかね、あの態度は」
 NOVさんが、怒っていらっしゃる! これはキクチの態度を改めさせねば!
 朝の群馬で、僕はシャウトします。
「何をボサボサ歩いている! 走らんかッ、貴様!」
 朝っぱらから、デカイ声を出す僕に、走るんで頼むから静かにしてくれとばかりに、キクチが面倒臭そうに走り出します。
 しかし、とりあえずキクチを走り出させただけで、何も考えていなかった僕は、近寄られるにつれ、リアクションに困るわけです(むごい)。
 まぁ、日本ハムも優勝したことだし、これでいいや。
 そんなノリで、僕が発した言葉は、これ。
「みんな、胴上げだッ!」
 こうして僕らの近くへと走り着いたキクチは、急に抱え上げられ、胴上げをされるわけです。朝の閑静な住宅街で……。
 まぁ祝福する形だから、これでめでたし、めでたしじゃ。
 と、思いきや、胴上げをされたキクチのリアクションは、
「おい、ゲンッ! おめぇ、絶対に落とすなよ! 落とすなよッ!」
 と、高々と数回胴上げされた後、地面に落とされることを想定した注意喚起。終いには、落とされてなるものぞと、僕の首に腕を巻きつけ、いわゆるヘッドロックの状態にもっていく始末。
 いくら僕が笑い超人でも、アスファルトの上に友(仮)を背中から落下させる荒技を繰り出すはずがありません。
 嗚呼、キクチよ。お前はどこまで、私を酷いヤツだと思っているのだ……。
 悲しみ浸ると同時に、キクチに対する憎悪を募らせる僕。
 この恨み、果たさずおくべきか。
 キクチと別れるまでに、復讐を誓います。
 なにはともあれ、キクチがパーティーに加わり、車に戻ったところで、群馬観光スタートです。
 あっ、そうそう。名前はわからないけど、開店前に駐車場に車を置くだけ置いて、何も買わずに立ち去られた群馬の某本屋さん、どうもすみませんでしたッ! (つづく)