キクチ・クエスト (第13話)

gen-19812006-11-24

 今日の仕事中、ふとドライブに行こうと決めました。
 花金だし、今日やっちまえってなノリで、業務終了後、友人らに片っ端から連絡すると、無双祭さんと、例のド天然が参加を了承。特に行く先は決めてなかったのですが、なんとなく以前から気になっていた富士山麓の白糸の滝へ。
 1時間強で到着したのですが……真っ暗で何もみえやしねぇ! 無双祭さんが、携帯電話のライト機能があることを知っていたからこそ、どうにか行動できたものの、彼の知識がなければ、行って帰るだけでした。いやはや、やはり持つべき者は、博識な友達ですな。車内で間違った歌詞で、鼻歌を歌い続けるヤツなんて、ホント役に立たないですから(笑)。
 え、本当に悪いのは、無計画なプランを練ったやつじゃないかって? そんなことはありません。それはパーフェクト超人のネプチューマンが、最後に残した言葉からも明らか。
「この世にたった1つ完璧なものがある。それはゲンの計画性だ」
 やべぇ、なんかまたキン肉マンネタで落としちゃったよ。
 とにかく本編です。



「おい、キクチ。わかってると思うが、今度(の案内先)滑ったら、もう次はねぇぞ」
 移動中の車内で、僕が凄みます。これは静岡から訪問した4人の総意であったと言っても、過言ではないでしょう。
「んなこと言っても、ホントに何もないんだってばよぉ」
 追い込まれたキクチ。しかし、次の瞬間。彼には天啓が閃いたようです。
「あ、そうだッ! ブラジル人通りってのがあるんで、そこに行ってみやしょう」
「ブラジル人通り? なんだそりゃ?」
「静岡の浜松も、ブラジル人が多いけれども、この町も某大手企業の工場があるせいで、ブラジル人が、すげーたくさんいるんすよ。だもんで、その人っち向けの店が集まっている通りがあるんでさぁ。それが通称、ブラジル人通りってんで」
「ふぅん。ちぃっとは、オモシロそうじゃねぇか。いいぜ、連れて行ってみな。ただし、スラム街みてぇなところじゃねぇだろうな?」
「何言ってんすか。ここ群馬すよ。大丈夫すよ。ただ路地裏でサッカーとかしてると、ブラジル人の子供が、混ぜてくれって言ってくることは、よくあるみたいですがねぇ」
「安心しろ、俺達はサッカー王国静岡から来てるんだ。ペレだろうが、ジーコだろうが、相手になってやる」
 あ、賢明な皆さんは、お気づきかと思いますが、ゲン、キクチ、NOV、ジョイトイとも元柔道部で、清水出身にも関わらず、サッカーは大してできません。クロさんは、フットサルをやられているので、上手かもしれませんが。
 要するに、上の発言は、まったくの戯言ですので、あしからず。
 なにはともあれ、キクチの発言に従い、僕らはブラジル人通りへ。
「遠いのか?」
「すぐすぐ」
 キクチの言葉どおり、ブラジル人通りには、ものの数分で到着しました。
 車で通りを走りながら、キクチが沿道の店を指差して言います。
「ほら、あそこにタトゥー屋があるでしょう」
「ふぅん」
「ほら、あそこにも、あそこにも。同じ通りにタトゥー屋が3軒て、ありえなくないっすか!」
「はぁ……」
「以上、ブラジル人通りでした」
 って、おいッ! もう終わりかいッ! ていうか、車でシャッターの閉まりきった休日の商店街を走っただけじゃねぇかッ!
 車内の空気は、もはや最悪に近い状況。
「キクチちゃん。小指のない大学院卒ってのは、一般社会じゃ、あんまり流行らないと思うよ」
「まぁまぁまぁまぁ、抑えて抑えて! 太田市まで行けば、色々あるからッ!」
 彼が言うには、彼の住む大泉町は小さい町なので、本当にこれといった観光名所はなく、彼の会社がある太田市まで行けば、色々あるのだそうです。
「……そこまで言うなら、君の処分は、太田市まで行ってから決めようか」
「あざっす!」
 キクチに寛大な延命措置を下したところで、僕らはお隣の太田市へと向かいました。 
 画像は、その前の名もなき城跡にいたアヒルです。 (つづく)