キクチ・クエスト (第14話)

gen-19812006-11-27

 今さらになって、今作のタイトルを『キクチ・クエスト』じゃなくて、『キクチ・カンタービレ』にすれば、今っぽくて良かったと思っています。しかし、修正する手間を考えると、なかなかおいそれとは、実行に移せません。で、やっぱクエストです。
 日曜の午前中のとある事件を契機にマジ切れ&心が荒んだ男の描くブラック・ユーモア・サスペンス、『キクチ・クエスト』をどうぞ!



 車で北に走ること数十分。
 僕らは太田市へとやって来ました。太田市と言えば、最近、警察官が郵便局に強盗に入ったことで有名ですね。彼に魔が差したのも、きっとキクチのせいです。ご愁傷様です。
 さて、僕らはキクチに案内されるがまま、太田市中心街から少し離れた無料駐車場に車を停めました。
 そこでキクチから衝撃の一言が。
「今から太田市の風俗街に行きます」
 時刻は、まだ朝の10時。
「おい、キクチちゃん。いくらおめぇが好きだからって、そんなところに連れてかれても、まだこの時間じゃやってねぇぞ」
 顔をしかめる僕に、キクチが諭します。
「まぁまぁ。そう言わずに雰囲気だけでも、味わって下さいよ」
 こうして僕らはキクチに従い、渋々歩き出したのですが、進めど進めど、それらしき場所は見えません。それどころか、一旦太田駅の北口に入って、南口から出る始末。
「おめぇ、いったいどれだけ俺たちを歩かせれば気が済むんじゃ!」
 いい加減、うんざりしていた僕が、他の人の気持ちを代表するように叫びますが、
「まぁまぁまぁ」
 と、すっかり怒鳴られ慣れたキクチは、悪びれる様子もありません。
 それどころか、
「ちょっと待ってて」
 と、コンビニ消えたかと思えば、なんと肉まんを食べながら出てくる始末。
「いやー、さっきハルちゃん(ジョイトイ)が食べているのを見てたら、俺も食いたくなっちゃってさ」
 どこまで自由なんだ、君は?
 南口で、そうこうしていると、バス停に長蛇の列を発見。
「なんだい、ありゃ?」
「あー、あれはジャスコに行くシャトルバスを待っている中高生の列ですわ。他にこれといった娯楽もないんで、みんなジャスコに行くんすよ、ここらの学生は」
 訊ねた僕にキクチが応えました。なんだか悲しい気持ちになったことは、言うまでもありません。
 その後、朝の駅前の商店街および風俗街を歩くも、朝だけに猫の子1匹おらず、ただの虚しい散歩なりました。
 1時間弱歩かされ、ようやく車に戻って来たときには、僕らは疲労困憊。近くに某王手自動車メーカーの工場があるとかで、ス○ルモナカとやらを、キクチが僕らに買い与えてくれましたが、それで怒りが収まるはずもありません。
「キクチ、いい加減にしとけよ」
 口々にキクチに呪いの言葉を吐き出すメンバーたち。暴動寸前です。
 次回、キクチは巻き返しなるのか!?
 画像はアヒルの後ろ姿です。 (つづく)