美食倶楽部最大トーナメント (第5話)

 先日(日曜)、とある関係で、八景島シーパラダイスに行って来ました。ええ、あの大雨の中を。
 でね、行くまでさ、知らなかったんだよ。遊園地だって。水族館だと思ってたんだけどさ。よく見たら、いろいろあったんだよな。おっかねぇ乗り物が。
 俺、絶叫マシンとか乗れないんだよ。チキン? いや、違うな。俺みたいな繊細な造りの人間は、ああいうのは好まないのさ。
 でもせっかく行ったからには、1つくらい乗ろうと思ってさ、揺れる船のヤツに乗ったんだよ。けっこうしつこいヤツでね、降りた後も、デリケート部分がヒャンヒャンするわけさ。気がついたら、何か目から雫が垂れてるしね。
 もう絶叫系には、金輪際乗らぬと決めた26の夜でした。
 続きまして、本編を。



 平成19年、4月某日。
 この日、東京九段にある格闘技の聖地、日本武道館は、16300人、超満員の観衆で埋まっていた。観客の目当ては、もちろん、この日開催される美食倶楽部最大トーナメントである。前売り券はソルドアウト。前日の夕方からは、当日券を求める者で、徹夜組まで現れる程の大盛況であった。
 試合開始時刻が近くづくのに比例して、場内のボルテージは高まっていく。そして試合開始時刻の3時ジャスト。場内が暗転した。会場中央に設置されたリングにだけ、照明が当たる。そこにはプライドのリングアナも務めるケイ・グラントが、マイクを手に立っていた。
「本日は、美食倶楽部東京大会にご来場頂き、まことにありがとうございます! 只今より、『美食倶楽部最大トーナメント』を開催致します!」
 観客席から、割れんばかりの歓声が上がる。その声が収まった頃、再びケイ・グラントの声が館内に響き渡る。
「最初にルールの発表を致します。本日は16名の参加選手によるトーナメント方式で、1番おもしろい男を決定します。対戦する選手は、まずジャンケンにて先攻後攻を決定し、しかるのち、先攻の者が1ネタ披露します。このネタは、相手の体にさえ触れなければ、ショートコント、一発芸、モノマネ、ものボケ、どんなジャンルのネタでも認められています。それに対して、後攻側の選手は、口に一定量の牛乳を含んだ状態で、笑わないように耐えます。口から1滴でも牛乳がこぼれてしまったら、勝負あり。笑わずに耐え切った場合は、攻守を逆転して、試合続行。これを決着が着くまで繰り返す完全決着方式で、覇を競います!」
 完全決着ルールが採用されたことで、客席が息を呑む。ざわつきが止んだ頃合に、ケイ・グラントが、再び口にマイクを近づけた。
「それでは究極ルールで戦う16名の猛者達を紹介しましょう! 選手入場!」
 観客席から爆発的な歓声が上がった。 (つづく)