美食倶楽部最大トーナメント (第7話)

 本日、帰宅してみると、何やらHONDAからの便箋が僕宛に着ておりました。
 『重要なご案内』と銘打たれていたので、恐る恐る開けてみると、そこには衝撃の内容が!
 なんと僕の愛車(原付)の機種に、不具合が見つかり、リコール対象であるとのこと!
 なんじゃ、こりゃぁッ! ……てぇこたぁ、なんだ、俺は具合の悪い原付で、あるときは日帰りで甲府に行き、さるときは山を越えて井川に行き、終いにゃ伊良湖岬を目指したと言うのか!? 良くもまぁ、生還できたものよのぅ。
 とりあえず近日中に、修理してみたいと思います。
 では本編をどうぞ。



 オープニングセレモニーが終了した後、ゲンの控え室にNOVとラフィートがやって来た。
 セレモニーの後、関係者のみを集められて行われた抽選の結果、オープニングマッチとなるAブロック第1試合への出場が決定したゲンを激励するためである。
 目を閉じて、椅子に座しているゲンに、NOVが声をかける。
「いやはや、まさかゲンさんがオープニングマッチを努めることになるとは、思いもよりませなんだ」
 NOVの言葉を聞くと、ゲンはゆっくりと目を開いた。
「嫌いじゃないんですよ、1番手は。目立つし、なんせ勝てば美味しいからね」
 ゲンの顔は穏やかで、自信が漲っている
 NOVに続いて、ラフィートも口を開く。
「対戦相手の無双祭は、ゲオルグ一門所属の重鎮だとか。ゲオルグ運営ブログ『ゲオルグズ・アクション』は、日本屈指の面白さと評判のサイトです。そのゲオルグが重宝する男ならば、無双祭という男、相当な使い手であることが予想されます。こんなことを僕が言うのはアレですが、十分に気を引き締めてかからないと、痛い目に遭うやもしれませんよ」
 ラフィートの言葉を聞いても、ゲンの表情は険しさを見せない。それどころか余裕綽々の様子で応える。
「そうですか、そうですか。なかなか手ごわい相手のようですね。とはいえ、俺にもね、究極の笑いを求め続ける美食倶楽部の頭を10年以上勤めてきた自負がある。俺の敗北は、言わば美食倶楽部の敗北と、世間は捉えるだろう。だからね、そうやすやすと、負けるわけには行かないんだよ」
 ゲンが言い終えると同時に、控え室のドアが開かれた。訪れたのは、大会の運営係である。
「ゲン選手、第1試合の準備が整いました。只今より、入場となりますので、私に続いて下さい」
「ああ。――勝ちをもらいに行きますか」
 ゲンが席を立ち上がる。
「ゲンさん、ファイトです!」
「美食倶楽部の笑いが本物だってことを、見せ付けてやりましょう!」
 NOVとラフィートの声援に手を挙げて応えると、ゲンは控え室を後にした。 (つづく)