美食倶楽部最大トーナメント (第8話)

 お久しぶりでございます。ここで突然ですがクイズです。
 先週の木曜日、このブログが更新されなかった理由は、次のうちどれでしょう。
 ① 極めて多忙であった
 ② 素で忘れていた
 ③ 面倒臭かった
 ④ 春眠暁を覚えず
 正解者には、何かあげます。
 続いて、美食倶楽部最大トーナメントの模様をどうぞ。 
 ……もしかしたら、今度の木曜も更新を休むかも。そのときもクイズが出題されたら、原稿の執筆が間に合わなかったが正解です(苦笑)。



〈Aブロック第1試合 ゲンVS無双祭〉
 ゲンがリングに上がると、既に無双祭が、ゲンの到着を待っていた。
「師、曰く。静岡の片隅に、笑いのためなら何でもする男がいる。その男は、小学生の時分より、笑いを取りたいが一心で、給食のサラダの汁(超すっぱい)を一気飲みし、パイナップルの皮を食べ切ったと言う。――美食倶楽部会長ゲン。あなたは全ての笑いを求める者にとっての憧れだ。そんなあなたと闘えることを、私は誇りに思う」
 一礼する無双祭に、ゲンは面倒臭そうに応じる。
「よしねぇ、よしねぇ。そんなに、崇めるのは。サラダ汁にしろ、パイナップル皮にしろ、勢いでやっちまっただけのことさ。大したことじゃなぇ。それよか、さっさと試合をやろうぜ」
 ゲンが言うと、レフリーの山本山小鉄から、先攻と後攻を決するジャンケンを行うよう促される。
 結果、先攻無双祭、後攻ゲンと決まった。
 山本山小鉄が声を大にして叫ぶ。
「先攻無双祭1本目!」
 掛け声が掛かると、無双祭は、ゲンの方へとゆっくり歩き始めた。そして、おもむろに名詞を取り出すと、ゲンに手渡そうとする。
「私、こういう者です」
 こりゃまたご丁寧に。無論、口には牛乳が含まれているので、言葉を発したわけではないが、そう思った矢先、ゲンは目を疑った。
 なんとその名刺は、無双祭のものではなく、彼一押しのアイドルのものだったのである。
 思わず口から牛乳を噴出しそうになる。
 まさか、俺が1回戦で負けるのか? いや、そんなことはあっちゃならねぇ! そんなことがあってはならねぇんだ!
 美食倶楽部会長として、オープニングマッチで敗北されることは許されない。この信念だけが、ゲンの口内から牛乳が漏れる行為を食い止めていた。しかし、強い気持ちとは、裏腹に我慢は限界に達している。
もはやこれまでか!?
 そう思った瞬間、レフリーの声が掛かった。
「攻守交替!」
 攻守交替とは、文字通り、先攻後攻の入れ替わりを示す。この声が掛かった時点で、攻撃側の笑いは、相手に通じなかったと判断されるから、これより後は、牛乳を吐き出しても敗北とはされない。まさにゲンにとっては、神の声だった。
「グバッ!」
 声が掛かってから間髪居れずに、ゲンは牛乳を吐き出した。我慢が祟ってか、思わずむせ返る。
「ゴホッ、グハッ!」
 何回か、嗚咽を繰り返し、ようやくゲンは立ち上がった。 (つづく)