美食倶楽部最大トーナメント (第9話)

 今日で、いよいよ最初の試合が終了です。この時点で第9話。完結する頃には、いったい何話になるのかと、戦々恐々する次第です。まぁ年末くらいには終わるかな(笑)。
 では私の妙技でお楽しみ下さい。



 大きく深呼吸をして、呼吸を整えたところで、ゲンは苦笑いを浮かべた。
「やれやれ。自分で、キャスティングしておきながら、こんなことを言うのは如何なものかと思うが、もうちっと参加選手のレベルを下げるべきだったな。危うく俺が1回戦負けを食らうところだったぜ。せめて初戦くらいは、俺が圧勝で終えられるぐらいのカードが望ましかった」
 ゲンのぼやきに、無双祭は微笑を浮かべる。
「あなたにそう言われるとは光栄です」
「買い被るなよ。俺の笑いなんざ、そう洗練されたもんじゃねぇ。とはいえ、この大会に出た以上は勝ちたいんでな。本当は、もっと勝ち進んだ後で使おうと思っていたネタを今から使うぜ。出し惜しみは止めだ」
 そう言うと、ゲンは1度コーナーに戻る。そしてあらかじめ用意していたボストンバックの中から、CDラジカセを取り出した。
 それを手にして再び中央に戻ると、レフェリーの山本山小鉄に声を掛ける。
「待たせたな。準備は完了だ」
 ゲンの言葉を聞くと、山本山が宣言する。
「後攻ゲン1本目!」
 声が掛かると同時に、ゲンはCDラジカセのスイッチを入れた。
 会場にイントロが流れる。
(……この曲はいったい?)
 不可解な顔をする無双祭に、ゲンが告げる。
「『水の星に愛を込めて』。アニメZガンダムのオープニングテーマだ。今から映像でガンダムを見せてやるよ。俺版だけどな」
 映像を見せる? テレビなど持ち込んでいないのに、どうやって?
 無双祭が疑問に思っていると、ゲンが何やら2色の声色を使い分け、同じフレーズを繰り返し始めた。
「クワトロさん? カミーユ! クワトロさん!? カミーユッ!? クワトロさんッ!? カミーユッッ! クワトロさんッッ!? カミーユッッ! クワトロさんッ!? カミーユッッッ!……」
 ゲンはただ曲の間中、同じ台詞を繰り返していただけである。しかし、無双祭には――否、無双祭だけでなく、武道館に居合わせた全員が、カミーユとクワトロが仲睦まじくしている姿が脳裏に映像として浮かんでいた。
(まさかこんなことって……)
 あまりに珍妙な光景を思い浮かべてしまった無双祭は、思わず牛乳を吹き出してしまう。
「ブハッ! ……ほ、星が消えていく」
「勝負あり!」
 山本山小鉄が、ゲンの勝利を宣言した。
 Aブロック第1試合 ○ゲン(Zガンダム)無双祭● (つづく)