美食倶楽部最大トーナメント (第11話)

 いやはや、GWでございます。
 せっかくの連休なので、私、意を決して――丸1日、今作の執筆を行いました(吐血)。ええ、これ以上ない程の、つまらない休日でございましたとも。とはいえ、数話程、ストックができたので、GW中に限り、若干更新のペースを上げたいと思います。あ、ホント、思っているだけなので、実行に移さなかったときは堪忍して下さいね。
 それでは本編をどうぞ。



 日頃から犬猿の仲で有名な美食倶楽部会長ゲンと副会長のキクチ。
 ゲンがキクチの元にやって来たのは、極めて不自然であると言って良い。
「何の用じゃ?」
 訝しがるキクチに、ゲンは告げる。
「そう露骨に嫌な顔をするもんじゃない。俺だって、来たくておめぇの顔を拝みに来たわけじゃねぇ」
「なら、なぜ来た? アンタも知っているだろうが、俺は次の試合に出なくちゃならねぇ。忙しいんだよ」
 彼の言うとおり、キクチは次の試合――Aブロック第2試合に出場が決定している。だが、キクチの発言を受けても、ゲンに悪びれる様子はない。
「そんなことは百も承知している。それにも関わらず俺がノコノコやって来たのは、お前の対戦相手が気になったからだ」
「初代会長がか?」
「ああ。忘れたとは言わさんぞ。あの日、俺とお前は、ヤツを、初代会長を美食倶楽部から追放した」
 時を遡ること十余年前。当時の美食倶楽部は、その前身とも言えるN中柔道部でゲン達の1年先輩にあたる男が会長を務めていた。しかし、この男、およそ会長職を務める器量にあらず、職位を利用した専横を振るった。当然ながら、会員達の不平不満は溜まる。そんな彼の圧政に怒りを覚えたゲン、キクチ、ジョイトイの3人が策を弄し初代会長を追放したのであった。これが歴史の闇に葬られたゲン2代目会長襲名秘話である。
 そんな経緯があったわけだが、今大会においては、あろうことか、その初代会長が出場を表明、さらには因縁のあるキクチとの対戦が決定した。ゲンがキクチのもとを訪れたのは、その辺りの穏やかならぬ空気を察してのものだった。
「キクチ、おめぇを応援するのは癪に障るが、あの野郎が勝ち進むのは、もっと気に喰わねぇ。それで直に聞きに来てやったんだよ。てめぇがヤツに勝てるのか、どうかをな。もしもいいネタがねぇんだったら、俺の持ちネタを貸してやってもいいぜ。無論、俺ほどのスキルも要さず、誰にでも簡単に爆笑をさらえるネタをだ。どうする? 使ってみるか?」
 ゲンの言葉を聞くなり、キクチはチッと舌打ちをする。
「ゲンよ、てめぇもモウロクしやがったな。あいつの笑いセンスは、俺の100分の1もありゃしねぇんだぜ。そいつは10年前から知れたことだ。野郎に俺が負けることなんて、100%あり得ねぇんだよ! それよか、あいつを倒したら、次はてめぇの番だぜ。人様の心配をしている暇があったら、てめぇの心配をしてやがれ! てめぇが10年前のあいつみたいになるのは、もう間もなくだぜ!」
 言うなりキクチは、ノブに手をかけ開けたドアを、けたたましく閉じて試合会場へと向かった。
 その後ろ姿をゲンは苦笑いを浮かべて見守っていた。 (つづく)