美食倶楽部最大トーナメント (第14話)

 気がついてみれば、もう14話目に突入した今作ですが、まだ1回戦の半分も終わっていないですね。……年内に完結すれば良いのですが。
 私にできることは、ひたすら書き続けることだけです。
 さて、今回はいよいよあの方の登場です。まだしゃべりませんけどね。



 キクチの試合が終了したところで、ゲンがNOVと連れ立って、リングサイドに特設された選手用の観覧席に姿を現した。
「ゲンさん、いよいよ次は、あの方の登場ですね」
「ええ、ハルロー入道、出家後の名をハルロー・オブ・ジョイトイ。曰く、美食倶楽部実力ナンバー1。曰く、天然記念物。曰く、笑いの最高峰。曰く、奇跡を呼ぶ男。――笑いの現人神として、ヤツを称える言葉は数知れません。そんな美食倶楽部のリーサルウエポンであるヤツを、今日、こうした場で大衆の目に触れさせることができると思うと、正直、武者震いを禁じえません」
「まったくです。世の中には、これだけ面白い人がいるという現実を、世間に知ってもらう絶好の機会ですからね。しかし……」
「なんです?」
「ハルちゃんの相手が悪い。萩木金一と言えば、芸能界で一世を風靡し、金ちゃん軍団と言われる団体があるほどの大御所。言わばプロ中のプロです。強敵ですよ」
「最強アマ対最強プロと言う訳ですか。――まぁ我々が心配したところで、どうにもなりますまい。あとはじっくり見物と行きましょうや」
 ゲンがそう言ったところで、花道に萩木が現れた。有名芸能人だけあって、観客席からは黄色い声援が飛ぶ。リングインしてからも、声援が止むことはない。
 その光景にNOVが唸る。
「さすが一流芸能人。登場だけで客席の心を掴みましたね」
ジョイトイにとっては、完全にアウェイな状況ですが、まぁあいつの神経は図太いですからね。こんなもん、気にならんでしょう」
 言っているうちに、次はジョイトイの入場となる。
 彼がリングに上り、羽織っていたガウンを脱ぎ捨てたとき、ゲンは思わず目を見張った。ジョイトイはTシャツ姿なのだが、その前面に大きな狼の絵がプリントされているのである。
「あ、あれはッ!?」
「どうなさいました?」
 驚いた様子のゲンに、NOVが何事かと問う。するとゲンは、強張った表情で語り始めた。
「ハルローのヤツ、なぜかは良くわからんのですが、普段から動物絵柄のTシャツを好んで着ます。その柄たるや、虎、白鷹など、無数にあるのですが、確か狼はここ1番でしか着ないはず……。つまり狼Tシャツは、ヤツにとっての勝負服」
「つまりハルちゃんは……」
「ええ。――本気だぜ! あの野郎ッ!」
 異様な興奮の中、次回、ジョイトイVS萩木。 (つづく)