美食倶楽部最大トーナメント (第13話)

 今日のは、久々に自信を持って公開できます。たぶん、おもしろいと思いますよ。



 熱唱。初代会長は満足そうであったが、会場は静まり返っていた。彼もようやくそのことに気がついた様子。
「なぜだ、なぜ笑わん!?」
 狼狽する彼に、勢いよく牛乳を口から吐き出したキクチが告げる。
「やれやれ、何をやるかと思えば、まさかゲンの猿真似とは……。相も変わらずつまらねぇ男だな、アンタは」
「なんだと!?」
「どこで仕入れて来たネタかは知らないが、今の替え歌は、中学時代にゲンとNOVが創ったものだ。俺をいじるためにな。だが、悲しいかな中学時代の産物。歌詞は語呂こそ合っているものの、歌詞に一貫性、ストーリー性がない。程度の低さは明らかだ。さらには俺の肌が北欧人の様に白い上に、筋肉が異常に発達していたことを前提に唄われているわけだが、そのことを知らない観衆に対し、いきなり今の歌を披露しても、理解できるはずもない。そこまで考えを巡らすことなく、俺が対戦相手というだけで、以前どこかで聞いた俺をテーマにした替え歌を唄うことで勝ちを狙うなど、愚の骨頂! あさはかにも程があるぞ、初代会長!」
「ぐ、ぐむむ……」
 図星をつかれ、初代会長が怯む間にも、後攻のキクチの攻撃が始まる。
「貴様なぞ、一言も言葉を発せずに倒してやる」
 言うなり、彼はリング状に、洋服屋などに常置されている試着用の着替え室を用意した。
 何をする気かと、観客がざわつく中、キクチはその中に足を踏み入れる。
 およそ30秒後、彼は再びリング状に姿を現した。ふんどし1枚のみを装着しただけの裸姿に、白い馬の覆面を被った状態で。
 そのあまりの奇妙さに、会場は爆笑に包まれる。至近距離で彼の姿を目にした初代会長も、これには耐え切れない。
「グバハッ!」
 鼻と口、双方から同時に牛乳が流れ出した。
「コーホー」
 勝利を確信するや、キクチは何も言わずに初代会長に背を向け、リングをあとにした。無論、裸白馬の格好のままで。
 Aブロック第2試合 ○キクチ(裸白馬)初代会長● (つづく)