美食倶楽部最大トーナメント (第33話)

 今回で、とうとうゲンVSキクチが決着です。っていうか、これでストックが切れましたよ。またチョビチョビ書きためなくては。



 口、鼻、耳。3箇所から同時に牛乳を噴射したキクチを指差し、ゲンが審判にアピールをする。
「審判! 牛乳を吐き出したぞ! この勝負、俺の勝ちだッ!」
「え……」
 ゲンの指摘に、硬直する山本山。それもそのはずで、キクチが牛乳を吐き出したのは確かなのだが、彼はゲンのネタに笑ったのではなく、彼の暴露話に驚き、怒り、憤って、牛乳を噴出したのである。それを勝利と呼んで良いものか。山本山だけでなく、居合わせた観客および関係者全員、誰もがゲンの勝利宣言に疑問を抱いた。
 そんな雰囲気をいち早く察したゲンが、山本山にアピールする。
「今大会のルールを作ったのは俺だが、決着は、相手に口から牛乳を吹き出させたらとのみ明記してある。だから、キクチが牛乳を吐き出しちまった時点で、俺の勝ちってわけ。気になるなら、選手入場前の試合ルールの説明を思い出すんだな。確かにそう言ってるぜ(気になる方は、見直して下さい)」
 ゲンの発言を聞いたのち、少し間をおいたのち、山本山が宣言した。
「勝負ありッ! 勝者ゲンッ!」
「ダァァッッ!」
 ゲンが拳を天に突き上げる。しばらくの後、館内には大ブーイングが巻き起こった。そして観客よりも収まりがつかないのは、裏切られたばかりか、その裏切りをネタにする卑劣極まりない手により敗北したキクチである。
「ゲンッ、ぶっ殺すッッ!」
 もはや暴力沙汰も辞さぬといった様子で、ファイティングポーズをとったかと思うや、猛然とゲンに襲い掛かろうとする。
 だが、ゲンに動じる様子はない。むしろ余裕たっぷりの様子で、素早く右の手を天にかざした。次の瞬間、武道館内に無数の銃声が轟いた。四方の観客席に、銃を構えた迷彩服姿の男達が立っており、彼らの放った銃弾は、的確にキクチを捉えていた。薄れゆく意識の中で、キクチが唸る。
「ゲン、てめぇ……」
「安心しろ。麻酔銃だ。こんな展開も見越してな、俺が戦いの前に配置しておいた」
「ちくしょう……」
 完全に麻酔が回ったのだろう。キクチはその場に倒れ伏した。そのキクチに痰唾を吐きかけて、ゲンが呟く。
「バカ野郎が。手を煩わせやがって」
 リングを去るゲンに、これまでにないほど巨大な罵声が浴びせられのは言うまでもない。
「♪わーれーはゆくー、青白き頬のままでー」
 その大ブーイングの中、ゲンは上機嫌に鼻歌を鳴らしならが、引き上げていった。 (つづく)