美食倶楽部最大トーナメント (第32話)

 今回の話は、視聴率(?)取りたさに、マジで初出しの暴露話です。笑ってもらえれば本望です。



 ゲンのフィニッシュ発言により、館内を緊迫した空気が包み込む。
 そんな雰囲気の中、キクチが牛乳を口に含んだ。審判の攻撃開始の声が掛かったところで、ゲンがネタを始める。
「夏らしく、ある怪談を聞いてもらおうか。昔々あるところに、2人の少年AとBがいました。AとBは小学校で出会い、同じ中学校に進学しました。中学で同じクラブに入部した2人は、高校と大学は別だったものの、付き合いは続いていました。やがて大学を卒業したAは金融関係の仕事につきました。それに遅れること2年。Bは自動車関係の仕事に就きました。あるときBは、Aに会った際に言いました。
『なぁ、Aよ。俺、研究職なんだが、1年に1台、車を販売しなきゃいけないノルマがあるんだ。悪いけど、お前、今度、車買い替えるときに、うちの車を買ってくれない?』
 Bは普段、営業活動をしていないため、ノルマをこなすには家族、親戚、友人を頼るほかなかったのです。Bの話を聞く以前から、祖父から譲り受けたオンボロカーに乗っていたAも、そろそろ車の変え時だとは思っていました。以上のことから、2人の思惑は一致したかに思えました。しかし、そこには1つのアンマッチがあったのです。それは何か? AにはBの勤める会社のもので、欲しい車種がなかったのです。ですが、Bに本心を言っては話が厄介になると思ったAは、彼の問いかけに、こう応えたのです。
『ああ、わかったよ。車を買うときには、お前のところで、お前の名を出して買うよ』
 と。そのうちオンボロカーが車検を迎えたとき、Aはさっさと自分の欲しかった他社の商品を購入しました。え? これで2人の友情に亀裂が入ったんじゃないかって? そんなことはないですよ。なんせAは、Bに対して、未だに、
『ああ、俺、結局、前のオンボロカー、車検に通しちゃったんだよね。だから、次の車検が来るときかな、お前のところで、車を買うのは』
 と、言いはばかっているわけですから。――俺の話は以上だ」
 大したインパクトもない話に館内が、これがフィニッシュ宣言をしたネタなのか? とでも言いたげにざわつく。
 しかしながら、彼の話を聞くなり、青い顔をして、小刻みに顔面を震わせている者がいた。他でもない、キクチである。そんな彼に、ゲンが告げる。
「もうわかってるよな、キクチ。今の話、Aが俺で、Bがお前だってこと」
「ゲンンンッッッ! おんどりゃあああッッ!」
 激怒して思わず絶叫するキクチ。口はもちろんのこと、鼻と耳から、含んでいた牛乳が噴出した。(つづく)