美食倶楽部最大トーナメント (第31話)

 めっきり涼しくなりました。……ええ、この言葉から何かを発展させる気はありません。引き続き、ゲンVSキクチでお楽しみ下さい。



 NOVがラフィートの疑問に応じる。
「答えは簡単ですよ。2人が幼馴染だからです」
「え? それは知っていますけど……。どうしてそれが決着の着かない理由となるのです?」
「手のうちを知り尽くしているんですよ。お互いに。……今でこそ、犬猿の仲ですが、以前は地元で滑り知らずのお笑いコンビだったそうですからね、あの2人」
「マジっすか!?」
「俺もこの目で見たわけではありませんが、確かな筋からの情報ですよ。そんな2人だから、相手の表情や呼吸で、次に何のネタをやるのか察知できるのでしょうね。ネタがわかれば、後はそれに耐えうるだけの心の準備ができる。結果、牛乳を噴出すほどの笑いには至らない」
「その繰り返しで、現在に至ると?」
「おそらくは。この戦いに幕を引くには、どちらかが相手の想像を遥かに超えた究極のネタを繰り出すしかないでしょうね」
「なるほど。発想力――閃きが勝った方が、この長い戦いに終止符を打つと」
「俺はそう思います」
 2人の間で、そんな会話が交わされた頃。19回目のキクチの攻撃に耐えたゲンが、キクチに向かって語りかけた。疲労のせいか息も絶え絶えである。
「おい、クソ野郎」
「なんだ、バカ野郎」
「てめぇ相手に手こずってたら、決勝までに考えといたネタが、全部なくなっちまう。だからよ、次でケリを付けるぜ」
「やれるものなら、やってみやがれ。お前の持ちネタなど、全てお見通しだ」
「その発言を俺は否定できない。だが、俺はお前に勝たなければならない。美食倶楽部の会長は、笑いの全知全能の神たる存在。この究極ルールの戦いで破れるわけにはいかないんだよ! 行くぞ! 覚悟はいいかッ!」
 次回、ゲンの秘策が炸裂なるか!? (つづく)