美食倶楽部最大トーナメント (第17話)

 今日から地味に復帰します。またいつ休むともしれないブログですが、ご愛顧のほどを。
 さて、休みに入る前ですが、(手前味噌ではありますが)意外に気になるところで途切れていましたね。どうぞ、続きをご覧下さいませ。



 ラフィートの控え室で、予期せぬ観客の声援を聞いたゲンとNOV。
 ゲンが首をかしげる
「なんだって、観客が騒ぎ始めるんだ?」
「まるで次の試合の選手が入場しているかのようですね」
 控え室では、会場の様子をうかがい知ることはできないが、観客の声は届くのである。
 NOVの言葉に、ゲンは眉をひそめる。
「そうは言っても、ラフィートさんは、ここにいるわけだろ……なんだか、嫌な予感がするな。俺、ちょっと会場を見て来ます。ラフィートさんをお願いしていいっすか?」
「わかりました」
 NOVが承諾するや、ゲンは控え室を飛び出した。小走りで、会場へと向かう。
 会場にたどり着き、リングの上を見たゲンは驚愕する。ラフィートの対戦相手であるクロは本人に相違ないが、ラフィートになりすましている覆面の男が、リングに上がっているからである。
 ゲンは慌てて審判に喰ってかかる。
「おい、山本山、試合を止めろ!」
「なんですって!?」
「その覆面は、ラフィートさんじゃない! 偽物だ! 本物のラフィートさんは、先程控え室で倒れているところを、俺が発見保護した。おそらくこの者にやられたのだろう。そんな危険で、正体不明の男を、この神聖なリングに上げるわけにはいかない! この試合、中止だ!」
 ゲンの迫力に押されたのか、山本山が試合を一旦中断したときである。
 覆面の男がマイクを手にした。
「フッ、俺がラフィートと入れ替わったことによく気付いたな。しかし、俺は暴力で、この座を奪い取ったのではない。正式な手続きを踏んだのだ」
「なんだと!?」
「俺は控え室にいるラフィートに、この大会ルールで闘いを挑み、勝利した。だからこそ、ここに立っているのだ。それとも何か、俺が美食倶楽部の会員および関係者ではないから、出場を認めないとでも言うのかね、美食倶楽部会長ゲンよ」
「クッ……」
 言葉を失うゲンに、覆面はさらに畳み掛ける。
「お客さんも、美食倶楽部の正式会員を破った俺を排除した大会で、誰が優勝しようと納得せんだろう。どーですかッ!? お客さんッッ!」
 巧みなマイクパフォーマンスで、会場の意見は、断然覆面へと傾く。客席から大音声の『やらせろ』コールが巻き起こった。ここまで盛り上がったにも関わらず、断固として覆面の参加を拒否しようものなら、大会の面目は丸潰れとなることは必定。
 ゲンは苦々しい表情で、急遽覆面との対戦が浮上したクロに訊ねる。
「……と、まぁ状況は見てのとおりです。やってもらえますか?」
「ああ、僕は構わないよ」
 クロは即答した上で、ゲンに訊き返す。
「それにしても、この覆面の人は、いったいどこの誰なんだい? ゲンちゃん、心当たりある?」
 わずかな沈黙のあと、ゲンは応えた。
「……この大会を企画したときから、この人が黙っているとは思わなかった。体型、マイクパフォーマンスの声、そして被っている獣神サン○ーライガーの覆面。間違いない、この人は……獣神サクライガーだッ!」
 コメント常連、獣神サクライガーがゲンブログに殴り込みッ! どうする、美食倶楽部! (つづく)