美食倶楽部最大トーナメント (第24話)

 今日のは、けっこう力作だと思います。少しでも、臨場感が伝わればよいのですが……。なにはともあれご覧下さい。



〈Dブロック第1試合 ダミアンVSもっちー
 リング上で対面したダミアンともっちー。異色対決の実現である。
 対戦相手が、かの悪名高き『美食の狂犬』とあって、どんな男が現れるか戦々恐々のもっちーであったが、目の前の男は少なくとも見た目は普通である。
 これが美食の狂犬か。はてさて、この大一番で何を仕掛けてくるかね?
 先攻ダミアン、後攻もっちーと決定したところで、彼は牛乳を口に含む。
 さぁ来い、美食の狂犬!
 意を決したもっちーを嘲り笑うかのように、ダミアンは薄気味悪い微笑みを浮かべた。
「ポッキー食べるかい?」
 言ったのち、自らが高笑いをすると、彼はパチンと指を鳴らす。すると場内にどこからともなく鳩の大群が現れた。
 上空を旋回する鳩の大群を確認すると、今度はダミアン、自分の着ていたTシャツを破り捨てる。さらに彼は、持参したバックの中から何やら取り出した。
「おい、会場の観客! これが何かわかるかッ! そうじゃ、これは、俺がわざわざ浅草寺まで行って買ってきたハトの餌じゃ! よく見晒せや、このクソボケがぁッ!」
 絶叫するや、彼は仰向けに寝そべると、剥き出しの上半身に持参した鳩の餌をおく。
 すると、どうしたことだろう。視覚で認知したのか、はたまた臭いを察知したのかは不明だが、上空を旋回していた鳩が、文字通りダミアンに猛然と飛び掛ったのである。
「ギャァァァッッ!」
 会場にこだまするダミアンの悲鳴。上半身に覆いかぶさった鳩の大群。その光景は、さながら鳩に喰われている様であった。
 ダミアンの体を張った芸に、もっちーの目は釘付けにされていた。
 こ、これが日本に観光に来ていた韓国人の大軍を笑わせるために、ダミアンが浅草寺で実行したという伝説の鳩ネタか!
 さすがに語り草になっているだけに、もの凄い絵図らである。加えて、明らかに自業自得であるにも関わらず、苦しげな表情を浮かべるダミアンが、なんとも滑稽であった。これでは、さしものもっちーも笑いを禁じ得ない。
「グハッ!」
 もっちーの牛乳噴出を確認した山本山審判が、ダミアンの勝ちを宣言する。
 その声を聞くや、餌と鳩を同時に手で払いのけ、ダミアンは立ち上がった。
「ったく、こいつら。獣だけに人間と違って、容赦ってもんを知りやがらねぇ」
 リング上に散乱した餌を、未だに無我夢中で食らい続ける鳩の大群を見下ろしながら、そう呟くと、彼はタバコ取り出し、1本口に加えて火を付けた。
 一服しながら、ダミアンは花道を引き上げていくのであった。
 Dブロック第1試合 ○ダミアン(アグレッシブ・ビースト)もっちー● (つづく)