美食倶楽部最大トーナメント (第26話)

 みなさま、今年も早いもので9月となりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
 さて、以前に宣言したとおり、9月となりましたので、ブログを再開しようと思うのですが、それにあたり、前の話を続けるのか、新しい話で始めようかと、色々と考えました。一旦は新しい話を始める方向に、僕の気持ちも傾いたのですが、やはりこれまでに思い描いていたネタを放出せぬまま、新しい話を書くことに、どうも踏ん切りがつかなかったので、続きを書くことにしました。
 というわけで、今日からは、また美食倶楽部最大トーナメントで、お楽しみ頂きたいと思いますので、よろしくお願いします。ちなみに更新曜日を設けると、プレッシャーが大きいので、不定期連載とさせて頂きます。マメにチェックして頂ければと思います。ではでは2ヵ月ぶりの続きをどうぞ。



〈Dブロック第2試合 トシVSエビフライ〉
 エブフライがリング上に上がったところで、既に入場を終えたトシと目があった。
「久しぶりだな、エビフライ。かれこれ10年ぶりぐらいか?」
「そうだな」
 2人は旧知の仲なのである。
「まさか1回戦で、エブフライとあたることになるとは思わなかったよ」
「俺も」
「まぁやるからには、後腐れがないよう全力でやろうな」
「ああ」
 ジャンケンの結果、先攻トシ、後攻エビフライと決定した。開始の号令と同時に、トシがスタッフに合図を送ると、リング上に布でくるまれた大きな物体が搬入される。
 布が外されると、それがアーケードゲームの筐体であることが明らかになった。
「これはゲーセンに置かれているビデオゲームか?」
「そう。昔懐かしの『ストリー○ファイター2』だぜ。こっちに来て隣に座れよ。おもしれぇもん見せてやるぜ」
 言いながらトシは、筐体の前に置かれた椅子に腰掛けた。
 エブフライには、彼の席の隣に座らなくてはならない義務は、大会のルール上はない。しかし、トシに言われるがまま、歩を進ませ、彼の隣の席にエブフライは腰を下すのであった。その潔さに、会場からは大声援が上がる。
「よし、じゃあ、始めるぜ」
 エブフライが腰を下すのと、ほぼ同時に、トシは硬貨を筐体に入れ、プレイを始めた。使用キャラクターはサガット(わかります?)である。
 プレイが始まるや否や、彼は巧みなコントローラー操作で、サガットの必殺技タイガーニーを連発する。そして、声を高らかにして叫ぶのであった。
「どうだいッ! サガットの野郎、タイガーニーを出すときに、親指を自分の尻の穴にねじ込んでるんだぜ!」
 確かにトシの言うとおり、画面上のキャラであるサガットは、そのような動きをとっていると見れなくもない。無論、制作会社が、そこまで考えていたとは考え辛いが。
 トシは更にタイガーニーを連発する。
「そらッ、そらッ、そらぁぁッッ! どうだぁ! おもしれぇだろうッッ!」
 このゴリ押しで決める! さぁ、もうギブアップ寸前だろう!?
 期待に胸を膨らまして、エブフライの顔を見やるトシ。しかし、彼が見たものは、笑顔のエブフライではなく、悲しげな表情で涙を流す痛々しい彼であった。 (つづく)