美食倶楽部最大トーナメント (第27話)

 あんまりハイペースで更新すると、またネタが切れて長期休暇に突入、なんてことになりそうですが、まぁ復帰2回目なんでね。中2日でいきますよ。どうぞー。ちなみにこのネタを思いつくのに2ヵ月掛かったのであります……。



 笑いを誘うはずの攻撃で、なぜか涙を流すエビフライ。予想外の状況に、武道館館内は水を打ったような静けさに包まれる。
「なんで泣く?」
 攻守交替の声が掛かったところで、不思議に思ったトシが訊ねると、エブフライは涙をぬぐうこともせぬまま応じた。
「昔を思い出した」
「昔?」
「ゲーセンに俺をつれていくトシ。ビデオゲームの横に座らされる俺。見事な腕のトシ。それを確認させられる俺。1度クリアしても、再度コインを投入するトシ。さらにそれを見せられる俺。座り続ける俺。帰りたい俺。帰れない俺……」
「え、俺そんなことした?」
「した。絶対。俺が定期テストの前日という日に、俺の部屋で深夜の3時までゲームをしていたこともあった。悲しくて、忘れたい過去。俺のトラウマ。そんな俺の前で、いくら君がゲームをネタに面白いことを言っても、俺は上手に笑えないよ」
 エビフライが皮肉な笑みを浮かべたところで、後攻攻撃開始の合図。今度はトシが牛乳を口に含む。すると、今度はエビフライがリング内に何やら搬入を行う。用意されたのは、ガラス張りのショールームだった。四方の壁には、客席に向かって『ブラザールーム』と書かれた張り紙が添付されている。
 何をする気だ? 居合わせた全員が思った。
 注目の的となったエビフライが取り出したのは、バルサンである。
「これはある部族に伝わる処刑の方法だ。今から実践してみせよう」
 言うなり、彼はバルサンの封を切り、ショールームの中に放り投げる。たちまちショールームの中は、バルサンの煙で溢れかえる。
 その光景を見たトシは、思わず牛乳を吹き出してしまう。液体が気管に入ったのか、苦しそうに咳き込みながら、彼は呟く。
「何がある部族に伝わる処刑方だよ。これはあんたが喧嘩した兄弟相手に、恨みを晴らすべく実行した恐怖の仕返し! グハッ!」
「そうだったかい? あまり覚えていないけど」
 涼しげな表情で、エビフライはリングを後にした。
 Dブロック第2試合 ○エビフライ(バルサン)トシ● (つづく)