美食倶楽部最大トーナメント (第40話)

 とうとう40話です。市場に出回っておる一般小説に換算すると、1話でだいたい2頁ぐらいなので、累計およそ80頁となりましょうか。こんなアホな話を、80頁分も読むよりか、なんか別の名作短篇小説を読むことを、読者の皆様の今後の人生を鑑みるに、絶対ためになると思うわけですが、まぁせっかくなんで、完結するまで、お付き合いくださいませ。死なば諸共、源は頼朝じゃ!
 今日で2回戦が全部終わるよ!



 ダミアンが優先的に先攻をもらう代わりに、その際のネタでエビフライが笑いを堪えた場合には、即敗北が決定する特殊ルールが制定された2回戦第4試合が始まろうとしていた。
 審判から攻撃開始の声が掛かったところで、ダミアンが高らかに笑い声を上げる。
「ガハハハ! しかし、アンタも物好きだぜ! このルールやったら、こんな面倒くさいトーナメントなぞやらなくても、俺の優勝は決まったようなものというに、わざわざそれを受けるのだからのぅ! まぁ、ええわ。 それじゃあネタをやらせてもらおう。 絶対に食べられないパンて、なーんだ?」
 えっ、ここまで引っ張っておいてナゾナゾ? いや、きっと凄いオチがあるに違いない!
 場内に居合わせた者全員が、ダミアンの次に発する言葉を固唾を飲んで見守る。そして、緊張感がクライマックスに達した瞬間。ダミアンは口を開いた。
「絶対に食べられないパン! それは、カレーパンじゃ。辛くて食べられへんからのぅ! ガハハハッ!」
 ククク、余りの衝撃に誰も声すら出せんわ!
 してやったり! 自分の笑いの世界を十分に引き出せたことで、満足したダミアンだったが、おかしなことにいつまでたっても観客から笑いは聞こえてこない。
 それもそのはずで、観客のほとんどはダミアンの特異な世界観を理解し切れずにいたのである。
「なぜだ、なぜ笑わんッ!」
 狼狽するダミアンをよそに、無常にも攻守交替の声がかかる。 エビフライは牛乳を吐き出してから、ダミアンに声をかける。
「アンタの笑いは難し過ぎるんだよ。1回戦の鳩みたいにツボに入れば、爆発的な笑いを生むが、外したときは如何ともフォローできなくなる」
「なっ、なんだと! つまり俺が鉄板ネタだと思い続けた『食べられないパンはカレーパン』は、その実、笑いを呼ぶ代物ではなかったと……?」
「そのとおりだ」
 長年信じていた相棒に裏切られたかのような、気になったダミアン。精神的なダメージを大いに被った彼を待ち受けていたのは、自我の崩壊だった。
「僕はね、浅草寺で半裸の体の上に鳩の餌なんか置きたくなかったんだ。でもね、ゲンさんがおもしろいから、みんなでやろうって言い出して収集がつかなくなって……」
「よしよし、ゲンのヤツには、私がきつく叱っておこう」
 2回戦終了!
 Dブロック代表決定戦 ○エビフライ(精神崩壊)ダミアン●