美食倶楽部最大トーナメント (第41話)

 今日も更新します。
 1月に入ってから、働きすぎですね僕。



 2回戦の結果を見届けると、美食倶楽部の若い衆は、会長ゲンの控え室に報告へと走った。部屋に駆け込むと、腰掛けにふてぶてしく座り、ブランデーを楽しんでいるゲンの前にひざまずく。
「申し上げます! ダミアン様、エビフライ殿に一発勝負を果敢に挑むも、あえなくご討ち死に!」
 美食倶楽部敗戦の報告を受けるも、ゲンは眉1つ動かさずに、グラスの中身をグイと一気に飲み干した。
「ホリコに続き、ダミアンも敗れたか。これで後半ブロックの美食倶楽部会員は全滅したことになるな」
「はっ、はい! 左様で」
 不愉快極まりないはずなのに、妙に落ち着いたゲンの口調が、若い衆の恐怖を増幅させ、応答の言葉を震えさせた。
 なおもゲンは、同じ調子で続ける。
「決勝は間違いなく同門対決になると踏んでいたが、美食倶楽部の名も地に堕ちたものだ」
「しかしまぁ、次はお屋形様と、ジョイトイ様の対決ゆえ、最低でも倶楽部の人間の決勝進出は確定したわけでございますゆえ、そこまで悲観されずともよろしいでしょう」
 ゲンに気を遣って発言した若い衆だったが、それが逆鱗に触れることになった。
 ゲンは若い衆の髪の毛を鷲づかみにすると、殺気に満ちた声で、彼の耳元で囁いた。
「ボウヤ、笑いに美学だの何だのと抜かすド天然野郎と、俺を同じにするんじゃねぇよ。勝つのは俺だ」
「ひぃ! すみまッ……」
 髪を掴まれた状態で、顔面を床にしこたま打ち付けられた若い衆は、謝罪の言葉を言い切る前に意識を失った。顔面から出血したのだろう。みるみる間に床に鮮血が広がっていく。
「バカ野郎が」
 舌打ちをすると、ゲンは身に着けていたバスローブを脱ぎ捨て、勝負服である柔道着に着替えた。
 そこへ係員が、入場を促しにやって来る。
「間もなく準決勝第1試合の時間です。入場の準備をお願いします」
「おうよ」
 ゲンは、柔道着の上にガウンを羽織ると、入場口へと向かった。 (つづく)