名古屋食い倒れの旅(第5話)

 味噌カツ屋を発見できぬまま、栄の街をふらつくこと約1時間。空腹での強行軍に、我々の士気は下がる一方です。
 このままでは、どうにかなってしまうYO!
 そう判断した僕は、妥協案を出すことに。
「こうなった以上は仕方ない。どこか適当なデパートに入ろう。食堂が寄せ集まったフロアがあるはずだから、そうすれば味噌カツ屋の1つや2つあるはずだ」
 しかし、僕の提案にも、他の人達はいい顔をしません。
「せっかく名古屋まで来たのに、デパートの一角で食事というのは、ちょっとね……」
 チェーン店では味に限界がある。どうせなら、個人経営のそれっぽいお店で美味いものを食べようではないかということです。
 そういうことならばと、再び歩き出した僕達でしたが、その後、如何に栄の街を闊歩しようとも、味噌カツ屋が現れません。
 30分経過したところで、今一度、僕は提案してみます。
「やはりここはデパートのグルメ街的なところで如何じゃろうか?」
 審議の結果……可決!
 さっそく僕は、最寄りのデパートに擦り寄ります。さらにはデパートの案内で、食堂街に入っている店を確認したところ、とうとう味噌カツ屋を発見! しかし、その名前は、某有名チェーン店のものだったのです。
 名古屋で味噌カツ屋といえば、上記の某チェーン店の名を挙げる人も多いが、有名ではあるけれども、味自体はさほどでもない。これが、僕らが名古屋に向かう道中での一致した見解で、この某有名チェーン店で味噌カツを食するのだけは止めようと言っていたにも関わらず、苦労して見つけたのは、某有名チェーン店だったわけです。なんたる皮肉!
 しかし、空腹がリミットまで達していた僕らは、道中での心意気をあっさりと覆してしまったのです。
「もうこの際、某有名チェーンでいいか!」
 こうして、ようやく飯にありつけると、意気揚々とデパートの最上階にある食堂街を目指した僕らでしたが、なんとそこには驚愕の光景が広がっていたのです。なんと某有名チェーンの前には、見るもおぞましいぐらいの行列が!
 妥協してきてみりゃ、これかよ!
 上から目線で見ていた某有名チェーン店に、足元を救われた気がして、なんだか怒りの感情が湧いてきました。
「2流チェーン店に、空腹を堪えて並べるかよッ!」
 逆ギレした僕らは、某有名チェーン店での味噌カツを諦めたのです。しかし、腹が減ったなぁ。(つづく)