名古屋食い倒れの旅(第8話)

 小倉トーストのおいてある喫茶店を求めて、来た道とは別ルートで、栄に戻る僕ら。しかし歩けど歩けど、どの店も閉まっていたり、表に展示されたメニューに小倉トーストが謳っていなかったりと、これぞという店を見出せぬまま、ついには栄の外れまで来てしまいました。
 小倉トーストの置いてある喫茶店って、意外に少ないのかッ!?
 昼食の味噌カツ(未遂)に続いて、おやつの小倉トーストでも大苦戦。嫌な流れを察したのか、ホリコからこんな提案がされました。
「幸いにも、ここは車を停めた駐車場の近くだから、ガイドブックを見に1度、車に戻ったらどうだろう? そしたら確実に小倉トーストにありつけるんじゃないの」
 僕らは、お上りさんだということが、バレバレになって恥ずかしいので、ガイドブックなど持ち歩けるか、と勇んで手ぶらにて栄の街に挑んでいたのです。しかし、この期に及んで、格好をつけている場合でないことは、頭の悪い僕でも理解できたので、味噌カツの悲劇を2度と繰り返してはならぬと、駐車場へと向かいました。
 そしてガイドブックで、小倉トーストの置いてある店と、その場所を確認したまでは良かったのですが、その後でまた一悶着が。
 もう地図も覚えたから、荷物になる上、路上で開いていたら、ちょっとカッコ悪いガイドブックを、わざわざ持って行く必要はないと主張する僕とNOVさんに対し、ホリコは万が一に備えてガイドブックを持って行くべきだと言うのです(ちなみに無双祭氏は中立だった気がします)。
 激論の結果、ホリコが自分で袋に入れて持って行くなら、異論はあるまいということになりました。この瞬間、僕とNOVさんの絶対に負けられない戦いが始まったのです。
「万が一、小倉トーストを食らう前に、もう1度、そのガイドブックを開くようなことがあったら、我々は末代まで阿呆のそしりを受けましょう!」
「ええ! 絶対に今の記憶を頼りに、掲載されていた喫茶店にたどり着かねば!」
 こうして、天下分け目の戦いの火蓋が切って落とされたのです。
 激歩30分強。そこには何かやらかした企業の責任者のように、ホリコに謝罪するゲンとNOVの姿があったそうです。
 しかしまぁなんだ、栄到着から通算で3〜4時間歩いたから、甘い物で糖を摂取することはいいことなんじゃねぇの。
 と、何事もなかったかのように、目当ての喫茶店に入り、注文をしたそのとき、事件は起こったのです。ホリコの口から衝撃の一言!
「僕はシフォンケーキ」
 な、なにゆえ、ここまで小倉トースト小倉トーストと言って来たにも関わらず、シフォンケーキを頼まれるかッ!? ていうか、シフォンケーキは静岡でも食えるんじゃないかッ!? 我々は、小倉トーストを食べるために、ここまで歩いたのではないかッ!?
 段々、全盛期のノリが戻ってきたところで続きます。 (つづく)