名古屋食い倒れの旅(第9話)

 ホリコ、まさかのシフォンケーキ食いの衝撃も冷めやらぬまま、僕、NOVさん、無双祭さんの3人は、運ばれてきた小倉トーストにパクつきます。
 油断すると、机に落下する餡に気を配りながらも完食。しかし、なんだろう、この胸に広がるモヤモヤ感は……。決して不味いわけではないのだが。
 その解答は、会計を済ませて、店を出たところでのNOVさんの一言に集約されていました。
小倉トーストって、わざわざ名古屋にまで来て食わなくても、家で普通に作れるんじゃないですかね?」
 僕の脳裏に小倉トーストのレシピが浮かびます。
1、 食パンを焼き、マーガリンを塗る。
2、 そこに市販されているつぶ餡を挟む。
3、 完成。
 ワオッ、高校の家庭科の授業以来、料理らしい料理をしたことがない僕でさえ、あっさりとレシピが頭に浮かびましたよ、ドドリアさん。
 なるほど、わざわざ地方まで来て食うものじゃなかったから、フラストレーションが溜まったわけですな。ちっ、なんてぇオチだ。
「こうなった以上、夕食の味噌カツに全てをかけましょう」
 気持ちを切り替えた(早い)僕は、あれほど持つことを嫌がっていたガイドブック(無双祭さん所有、ホリコ持ち運び)を平然と開き、味噌カツ屋を調べます。その結果、栄付近で美味そうな店を発見しました。
「よし、栄に戻ろう」
 喫茶店のある伏見から、再び30分ほど歩いて、僕らは栄へと戻って来ました。
 時系列の記述が少なくなったので、付け加えておきますと、この時点で既に午後5時ぐらい。夕食には早い時間ですが、食い倒れの旅と謳ったほど食ってないので、腹の準備はオッケーです。
 その後、さらにガイドブックを片手に15分ほど街を彷徨ったところで、ようやく目当ての店を発見。ですが店頭には、まさかの張り紙がッ!
『本日、都合により臨時休業致します』
 全世界の人類よ、括目して見よ! 静岡くんだりから、わざわざガイドブック片手に名古屋の有名店に訪れれば、そこが臨時休業となる! これが美食倶楽部クオリティ!
 僕は切れ気味に叫びました。
「やっぱり俺達には、某有名チェーン店の味噌カツがお似合いと、神は判断なされるかッ!」
 奇跡の展開は、まだまだ続きます。 (つづく)