いざ、鎌倉! (最終話)

 僕が、良い女がいるとの報告を、ある程度の声量で仲間にした刹那のこと。肝を冷やす事態が起こりました。
 小太り、スキンヘッドで、休日にも関わらずノーネクタイ、スーツ姿の怪しげなおっさんが、僕らの横を歩いていたのですが、そのおっさんが僕の指摘した良い女の方を振り向いて、何やら呼び寄せているではありませんか!? そして何やら話を始める2人。
 ええッ!? 2人はデートで、ここに来ているのッ!? こんなダサめの男と(僕に言われたくないかとは思いますが)、こんなキレいな女がッ!? そんなバカな!
 僕と同じ疑問をNOVさんとジョイトイも同じ疑問を持ったそうで、由々しき事態ですぞ、みたいな目で僕の方を見てきます。
 偶然にも奇妙なカップルは、僕らの前を歩き始めた(それも微妙な距離感を空けて)ので、僕は2人の後ろ姿を見ながら、どういう状況なのかを推理します。おっさんの横で、聞こえるぐらいの声で、
「あの女、良くないっすか?」
 とか、言ったことはすっかり忘れていました。
 余程の金持ちで援交しているだとか、女の方がおっさんフェチだとか、色々と考えを巡らしたのですが、その後、2人が会話しているときに聞こえてきた女の声が、妙にしゃがれていたので、僕は感付きました。
 そう。正解は、水商売の女が同伴で来ていた、ですね。声がしゃがれていた=酒焼け。そうだとしたら、男の方も、あんな雰囲気の方でも納得がいくわけですね。
 いやはや、名探偵も真っ青の僕の推理でしたね! ……結局、そんな下らない推理をしただけで、大した見せ場も作れずに、僕らは江ノ島を去ったのでした。
 江ノ電江ノ島駅に戻った僕らが、車の置いてある藤沢駅へと戻ったところで、午後2時半。この日は出発も早くなく、時間も早かったのですが、あまりに負の連鎖が繋がった(おもしろいことが少なかった?)ことで、僕らは精神的にも体力的にも限界に達しており、導き出された結論は……撤収。横浜とかに行こうと思えば行けたけど、撤収。
 自宅にたどり着いたのは、なんと4時過ぎという美食倶楽部の企画が始まって以来、空前絶後の早さだったわけであります。こりゃ、参ったね。
 ろくな笑いも取れぬまま、早い時間の解散。あまりに不甲斐ない結果に、溜まる一方のゲンのフラストレーション。
 次回の企画は想像を絶するものになることをお約束し(美食倶楽部会員の皆さん、引かないで下さい)、今回の旅の報告を終えたいと思います。 (いざ、鎌倉! 完)


* 今回で今年最後の更新とさせて頂きます。本年もご声援のほど、ありがとうございました。まだ次の企画の実行は愚か、構想すら浮かんでいない状態なので、次回の更新は今しばらく先の事になろうかとは思います。来年も細々と続けていきたいとは思っておりますので、よろしくお願い致します。
 それでは何とぞ良いお年を。


いざ、鎌倉!

 Cast
ゲン (主な仕事:運転)
NOV (主な仕事:トーク
ジョイトイ (主な仕事:野菜嫌い)
クロ
無双祭

スタッフ
文章:ゲン
シリーズ構成:ゲン
テーマソング:黒人演歌歌手『海雪』
企画:美食倶楽部
制作総指揮:ゲン