ゲン拉致されるⅡ(第2話)

 僕の飲酒のためコンビニを経由したので、旧道を行った僕らでしたが、興津にて国道1号線バイパスへと合流。そのまま富士方面へとひた走り、新富士駅のところを左折。富士市内を通過し、国道139号線を北上。約2時間かけて、最初の目的地である鍵穴(?)へとやってきたのです。
 標識が見えたところで、僕がキクチに伝えます。
「おい、鍵穴の標識が見えたぞ。Vターンしろ」
「はっ? 鍵穴じゃなくて、今の人穴って書いてなかったか?」
「……俺、最初から人穴って言ってなかったか?」
 ブログ的には、3行前に真実が載っているのですが、それはそれ。現実世界では、そうはいきません。
 キクチが憤怒したのは言うまでもありません。
「うぉいッ! 鍵穴って、言ってたじゃねぇかよ! だから俺のナビにも表示されなかったんだろうがッ!」
「てめぇ、俺が正月から嘘を付くような男かッ! いいから、さっさと曲がりやがれッ!」
 一悶着起こしながらも、僕らは通りを折れて進んでいくと、そこには古びた鳥居が。人穴の入り口に鳥居があることは、僕も人づてに聞いていたので、そこが目的地だと伝えました。
 そしてもう一つ、キクチに伝えました。これは都市伝説の類なので、興味がない方はアレなのですが、静岡県内の心霊スポットでインターネット検索すると、わりかし出てくる話です。
『人穴の鳥居を車でくぐると、その車は必ず事故に遭う』
 僕はあまり心霊現象は信じない性質なのですが、念のためにキクチに伝えておかないと、後で気分を悪くされても本意に反するので、一応繋いでおいたのです。まったく俺の半分は優しさでできとるで。
 あとはキクチがどう出るかですが、僕の話を聞くと、キクチは大声で笑い飛ばしました。
「何を言い出すかと思えば。そんなことを気にしてたら、美食倶楽部やってられへんわい! 行く先に、鬼が現れれば鬼を笑わせ、仏が現れれば仏を笑わせる! 低俗な自縛霊の呪いなど、ワシの取る笑いが吹き飛ばしてくれようぞ! 突撃じゃッ!」
 キクチ、かっこ良すぎ!
 こうしてキクチの運転する車は、清々と鳥居を潜って神社の方へ。そこは正月を祝うのぼりはあるものの、僕ら以外に訪れた者の気配はありません。
 恐る恐る階段を登り、本殿へと向かうと、そこには小さな社と、見渡す限りの墓、墓、墓。
 うわぁ、正月用の風景じゃねぇな。
 やや引きかけたところで、僕らはあるものを発見します。 (つづく)