ゲン拉致されるⅡ(第3話)

 僕らの見つけたあるものとは、社の東側にある下り階段。そこから下を覗いてみると、なんと洞窟のようなものが広がっているではありませんか。
 当然、美食倶楽部魂が撤退を許すはずもありません。洞窟に向かって進軍を開始します。洞窟の中には、ところどころにロウソクが焚かれており、微かにお地蔵さんが配置されているのが見えるものの、あまりに暗く、足元も覚束ない状況でした。
 それでも前に進むしかないので、先頭に立つ僕が足を踏み出すと、グチャともろに泥に足を取られる始末。何度試しても、どこもかしこも柔らかい泥。
「オオォッ! これじゃとても先には進めんぞ」
 根性でどうにかなるレベルを超えていたので、撤退を促さざるを得ない状況です。
「ここまで来たのに口惜しいが引くぞ」
 後ろ髪を引かれながらも、洞窟から撤退を余儀なくされた僕らは、再び社の前へと戻りました。すると、ここでNOVさんがある物を発見。
「あッ! あれって懐中電灯じゃないっすか?」
 なんと、おあつらえ向きに墓だか石碑の一角に、懐中電灯が置いてあるじゃありませんか!
「使えるんすかね?」
 僕が試してみると、電気もバッチリつきました。これが、正月に神が僕らに与えた奇跡でなくしてなんとする!
「きっとこれは、ここを訪れた者が共用で使える懐中電灯なのでしょうな。これで足元も見える。よしッ、再び洞窟に向かう!」
 こうして、都合のいい解釈をして、僕らは再び洞窟へ。
 先程、行き詰った場所で、懐中電灯を点灯。すると、泥の中に板が引かれているところがあり、そこを伝って奥まで進めそうです。
 洞窟の奥は、そこそこ深く50メートルぐらいあったのでしょうか。頭上に迫り来る天井(岩)とぬかるんだ泥に気を配りながら、僕らは最深部へとやって来ました。最深部にも、ここまでいくつかあったようなお地蔵さんが祭られていたのですが、あまりに天井が低く、アヒル歩きでなければ、たどり着けそうにありません。
 そこでキクチが全員の賽銭を手に、アヒル歩きでお地蔵さんのところまで行き、彼が賽銭を置いた時点で、みんなで祈ることに。
 いやはや、なんともいい加減な初詣(しかも洞窟の中)ですな。
 全盛期の美食倶楽部ならば、最深部にいるキクチを置き去りにすべく撤収の声をかけるのが定石なのですが、さすがに可哀相なので止めておきました。
 あー、大人になったな俺。牙がすっかり抜けたよ、俺。
 満足した僕らは、出口に向かって歩き始めました。
 えッ? こんな面白そうな場所の写真を何で撮ってこなかったかって? 
 だって俺、けっこう酔っ払ってたんだもん。 (つづく)