風林火山特別篇(第4話)
甲府にはいるものの、どこの街にでもありそうな住宅街を進んでいると、無双祭さんが不意に立ち止まり悲しそうな表情で、こちらを見て言いました。
「ゲンさん、ちょっとこの地図を見てよ」
彼は道端に立てられた地図を指差していました。
「どうしたんだい?」
「僕らは、西に向かわなきゃいけないんだよね。今、北に進んでしまってない?」
なっ、なにぃッ!?
確認したところ、確かに北に進んでしまっている模様。
むぅ、これはまずい。
ですが、先導していた手前、道を間違えたとも言えない僕は言いました。
「あっ、でもここから西に直進すれば、ちょうど甲斐善光寺じゃない」
西へと直進行軍、GO,GO,マッソー!
しかし、西側を振り向くや、そこには明らかにビッグ・ザ・魔雲天が。
「……山だぞ」
呟くジョイトイに、僕は反論します。
「とりあえず行ってみないと、進めるかどうかなんてわからないじゃないか」
そう言って、山に向かって歩き出す僕に、渋々着いて来てくれるジョイトイと無双祭さん。美食倶楽部にありがちな地獄絵図でございます。
間もなく、山の途中に神社を発見したので、何かしら有名なところかと思い立ち寄ってみるも、そこは本当に住宅街の一角に建設された名もない神社。みなさん、忘れないで下さい。武田信玄縁の地である甲府にも、僕らの街と同じく、ただ何となく造られた神社があるってことを。
「くそッ、とんだところで時間を食ったな。先を急ごう」
うなだれながらも、山を越えようとさらに道を進んで行くと、そこには如何にも工事をしているから通行止めと言わんばかりのおじさんが立っていました。
とはいえ、僕らには今さら引き返す気力も体力も残っていません。第一、今は直進行軍中なのです。突撃を試みると、案の定、声を掛けられるわけです。
「お兄さん達、この先は工事中で行けないのだが、いったいどこを目指しているだい?」
僕は臆せず応えました。
「甲斐善光寺」
途端、おじさんの表情が凍りつきました。
その理由は、また来週の更新で。 (つづく)