風林火山特別篇(第5話)

 おじさんは、独り言を言うかのように呟きます。
「……甲斐善光寺? ここから行けるのか……?」
 次の瞬間、彼は無線機で仲間に確認します。
「なぁ、こっちに甲斐善光寺に行こうって言う若い人達がいるんだが、こっから甲斐善光寺って行けるのか?」
 2、3言、無線で言葉を交わした後で、おじさんは僕らに言いました。
「ここから道なりに進んで行くと、車では通られない程の細い道が左手にある。そこを進んでいけば、甲斐善光寺に行けるようだ。工事は一旦止めるから、その横を進んで行ってくれ」
 むぅ、なんだ、この『無謀な挑戦をしようとする若者を、快く送ってやろうじゃないか』的なノリは。
 なんだか後を引くようなおじさんの言い方だったのですが、まぁ行かせてくれるなら、いいんじゃないのってのと、このまま進んでも目的地に着くと保証されたわけですので、僕らは足を進めることにしました。
 工事現場をヘコヘコしながら通り過ぎ、さらに道なりに進んで行くと、おじさんが言っていたのと思しき道が現れました。
「これか?」
「歩いて行けそうだが、ただの獣道に見えないこともないぞ」
 ジョイトイの言うとおり、いくら細い道とはいえ、いくらなんでもここまで細い上に舗装されていない道を、おじさんがわざわざ言うのかと、判断に困る道が現れたのです。
 数秒悩んだのですが、僕は『とりあえず行っとけ』的な性格ですから、進んで行くことになったのです。
 しかし、この道が誤った道と気付いたのは、間もなくのこと。なんだか、知らず知らずのうちに、何らかの施設内に入り込んでしまった模様なのです。
「ここは、学校か……?」
 言っていて僕は、みるみるうちに、全身から汗が噴き出しました。
 思い出したのです。ここにたどり着く前に、近辺に女子高と女子中があることを示唆した看板があったことを! もしや、ここは女子高の敷地内じゃあッ!?
 周囲の所々に掲げられた『監視カメラ作動中』の看板。音楽室と思しき一室から、汚い物を見るような目で、こちらを見ている女子生徒達……決まりだッ! ここは女子高の敷地内だ!
 さーて、警察沙汰になる前にさっさとずらかろうぜ、ジョイトイ、無双祭さん!
 男3人。ちょうどルパン一味みたいな具合に、僕らは駆け出しました。
 女子高を『侵略すること火の如く』……きついか?
 御用になるか否か、次回に期待して下さい。 (つづく)