名古屋リベンジ(第6話)

 テレビ塔の頂上からは、名古屋市街が一望できるのですが、男3人で登っちまったせいか、はたまた鉄格子が回りを囲っていたせいかは知りませんが、とりあえずあんまりキレイに思えなかった(そこかしこでカップルが、キレイだの何だのと騒いでいたせいもあったのでしょう)ので、早々に下ることにしました。
 憤懣やるかたない僕が暴れたのは言うまでもありません。
「クソッ、つまらねぇところだったな。これだったら登らないで、さっさとひつまぶしを食っていた方が良かったぜ。いったい誰だぁッ!? こんな恋人の聖地に登ろうなんて、のたまわったヤツは?」
 ええ、せっかく来たからには登ろうと、強く主張したのは私だったのですが、ケンダマンは私との師弟関係からして聞き流しを決め、ジョイトイは面倒臭かったらしく、特に突っ込みはありませんでした。
 ブツブツ言いながら闊歩する僕を、沈黙を決めた2人が取り囲んで歩く。そんな地獄絵図が変化の兆しを見せたのは、ジョイトイの一言に起因します。
「おい、あそこにひつまぶしの店があるぞ。誰かさんがテレビ塔に登ろうとかほざいたおかげで、もう開店しているひつまぶし屋はないと思ったが、あそこはまだやっているようだ」
 すっとこどっこいなジョイトイの嫌味も去ることながら、昼以来、何も食っていなかったせいもあり、結構腹も減っていたため、僕らはすぐに入店を決意しました。
 店に入った直後、なんだかファーストフード店みたいなちゃちな造りが気になったものの、退店できる雰囲気にもなかったので、着席してメニューを開く僕ら。値段は1000円近くとリーズナブル……否、これは安すぎやしないかッ!?
 湧き出る疑問を昇華できぬまま、適当なメニューを頼むと、間もなくして料理は完成。出されたひつまぶしを食べる僕ら。
 うーむ、不味くはないのだが、なんかこう、ギリギリ及第点といった味じゃのう……。見た目も地味だし。
 みんな同じ感想をいだいたようで、店を出た後の話は、割と統一感がありました。結果、先程飯を食った店は、ひつまぶしのファーストフード店だったんじゃないかということに。まぁ一言だけ言うとしたら、あれぐらいの店なら静岡にも、ゴロゴロあるんじゃねぇかってことですよ。ごっつぁんです。
 テレビ塔に引き続き、ひつまぶしも滑った感が否めない僕ら。
 見せ場のない中途半端な展開の連続に、ゲンが最後の秘策を決意したのは、この瞬間のことでした。
 キリがいいので、ここで次回に続きます。 (つづく)