発狂! パワフル信濃旅! (第4話)

 降りしきる土砂降りの雨。狭くてグネグネする道。倒れた無双祭さん。
 僕の心が折れるには、十分過ぎる事象が重なりました。
 しかし、心が折れたところで、泣こうが、叫ぼうが、この事態を打開するには、この道を進むか、今来た道を引き返すか、死んで(ちょっとハンドル操作を誤れば余裕です)楽になるしかありません。
 だったら、前に進もうと、僕は決めました。まぁ、死ぬ勇気もなければ、引き返す勇気もないとの消去法によるわけですが。
 我慢して山道を走ること数時間。午後1時過ぎ。ようやく飯田市街に到着しました。
「いよいよ美味い蕎麦にありつけそうですな!」
 地獄の山道行を経て、すっかり腹ペコだった僕らは、市営駐車場に車を停めて、表へと繰り出しました。
 しかし車外は相変わらずの土砂降り。傘すら持ってきていなかった僕らは、ある選択肢を迫られることに。
 傘を買うか、強行するか。
 無双祭さんと話し合った結果、達した結論は強行!
 理由は、出先まで来て雨だからといちいち傘を買っていたら、そのうち家が傘で溢れかえることになる……から。男らしいでしょ。
 雨の降る中、飯田市街をダッシュする僕ら。パッと見、蕎麦屋はありません。
 走りながら、無双祭さんが僕に言います。
「ゲン君、どこに蕎麦屋があると思う?」
「駐車場に車を停める前に、飯田駅を通り過ぎたよね。そこに行ってみよう。駅ビルか駅の周りなら、蕎麦屋の1軒ぐらいあるだろうから」
「わかった」
 降りしきる雨の中、走り続けること約5分。僕らは飯田駅までやって来ました。
 しかし、この飯田駅。車内から見たときには、そこそこの規模に見えたのですが、実際に訪れてみると、駅ビル的なものはなく、ただ電車が発着するだけの地方沿線の駅みたいな感じです。
 そして見回す限り、蕎麦屋らしきものは皆無。
「クソッ、まさか駅周辺まで蕎麦屋がないなんて!」
 地団太を踏む僕に、無双祭さんが次の策を講じます。なんせそうしている間にも雨に打たれているんで。
「駅前商店街みたいのがあるから、あそこになら蕎麦屋があるかもしれない」
「行かないでか!」
 僕らは商店街へと向かいました。 (つづく)