発狂! パワフル信濃旅! (第6話)

 蕎麦屋を探しながら、飯田市を北上する僕ら。
 すると、しばらく進んだところで、街道から少し入ったところに蕎麦屋がある旨の看板を発見。さっそく向かってみるも、既に『準備中』の看板が掛けられていました。いわゆる午後2時のボーダーラインにやられたわけです。
「くそッ、つくづく遣えねぇ店だぜ」
 悪態を付きながらも、もとの道に戻り、さらに進むと、またもやそれらしき店を発見。どうせここも……などと思いながらも確認してみると、ここは無事に営業中の模様です。喜び勇んで店内に入るものの、店内に他の客は皆無。
 ここまで来て不味い店に入っちまったのか? いや、きっと不味いわけじゃない。時間が遅いから、他の客がいないだけさ。
 そう自分に言い聞かせて、僕は『天せいろ』を、無双祭さんは、『もりそば』と『きしめん』を注文しました。無双祭さんが不思議な頼み方をするなぁなどと思っていたのですが、けっこうな空腹だったので、食事が目の前に運ばれてきたときには、すっかりそのことは忘れてしまいました。
 出てきた物を食べてみての感想は、天ぷらはそこそこだったのですが、肝心の蕎麦が今ひとつといったところ。
 もちろん店内で不味いなどと言えるわけないので、食事を終え、車に乗り込んだところで、さっそく無双祭さんに愚痴をこぼしました。
「今の店の蕎麦、イマイチだったよ。あーあ、なんで信州まで来て、イマイチの蕎麦を食べちゃうかな、俺」
 すると、無双祭さんから、衝撃の返答がありました。
「だってゲン君、きし麺のお店で、蕎麦を頼むんだもん」
「なっ、なんですとーッ!?」
 彼が言うには、当該店舗の看板には、確かに蕎麦との文字もあったのですが、その横に10倍くらいの大きさで、きし麺の文字があったとのこと。だから彼は、蕎麦がイマイチとの予測が働き、きし麺も頼んだとのことでした。
 蕎麦屋を探す余り、蕎麦の文字しか眼に入らなかった僕が、食べるべくして、信州まで来てイマイチの蕎麦を食ったというわけですな。ちなみに、きし麺はそこそこ美味かったそうです。さすがに蕎麦の文字より、10倍でかく書かれているだけありますな。グブッ(吐血)!
 結局、1番楽しみにしていた蕎麦も不発に終わり、失意のまま僕は、諏訪方面に再び車を発車させました。 (つづく)