ゲン、ひこにゃんと戯れる(第3話)

 昼食を取った店から、車で走ること、およそ30分。
 僕らは水郷の近くまでやって来ました。車を停車させ、さっそく水郷の回りを歩き始めます。
 なるほど、なかなか風情があって良いところですな。柳の木なんかもあって、時代劇のセットようでした。
 こうして水郷の見学を終えかけた頃、それまで静かに水郷を見学していたジョイトイから驚くべき発言がされました。
「俺、ここ、去年の職員旅行で来たところだわ」
「エエッ! なんで最初の段階で気付かねぇの!? ていうか、1回来たところだって、事前に言ってくれれば、わざわざ来なかったのに」
「いや、たった今、思い出したんだよ」
 うーん、1回りしたぐらいのタイミングで気付くのが、ジョイトイ・クオリティでございますなぁ。やはり並の大人じゃございません。
 ジョイトイの記憶力に驚愕を覚えながらも、僕らは水郷を後にし、近くにあった神社に立ち寄ることにしました。日牟礼八幡宮といって、商売の神様を祭ってあるようです。
 えっ、神社の漢字がよく覚えられたなって? これを書いているときに、ネットで改めて調べ直したりしてないって(笑)!
 参拝を終えた僕らは、今後の過密スケジュールをこなすべく、そうそうに車に戻り、次なる目的地である安土城址を目指しました。
 ここは水郷からさして遠い場所ではなく、これまた30分程で到着しました。
 そんなに聞いたことのないスポットだったので、ここも一回りして、早々にメインスポットである彦根に向かおうと思い、車を降りて受付に向かったところ、目の前に広がったのは、果てしなく続く山道と石段。
 しかも、雨が降りしきる中とあっては、僕の心が折れそうになったのも無理のない話です。
「ねぇ、これって、やっぱ上まで行かないとまずいパターン?」
「せっかく来たんだし、出直して来られる距離でもないから、行けるところまで行っておいた方がいいんじゃねぇの? 無理なら、そこから引き返してくればいいわけだし」
「行かないで後悔するより、行って後悔した方が、俺もいいと思う」
 ジョイトイ、無双祭氏ともに行く気がある様子。こうなった以上、言いだしっぺの僕が尻込みするわけには行きません。
「お主らの気持ち、よぅわかった。ここでワシが引くわけには行くまいて。ジョイトイ、無双祭氏、ワシに続けぇぃッ! 突撃だでやー!」
 妙なテンションになり、石段を登り始めた僕らの後ろから、受付のおばさんの、
「石段が滑りやすいから注意して下さい」
 との、声が聞こえて来ました。 (つづく)