ゲン、ひこにゃんと戯れる(第5話)

 若干ではありますが、雨が弱くなった隙を見て、僕らは車に向かってダッシュダッシュダッシュ、キック&ダッシュ
 かなり雨を被弾しながらも、トランクを開けて、傘をしまう準備をします。
 しかし、ここで1つの問題が発生しました。1人が傘を仕舞ったら、トランクから座席に着く間だけでも、ずぶ濡れになる程の威力のゲリラ豪雨だったので、誰か1人が相合傘をして、傘を置いた者を座席まで送って行く必要があったのです。
 まず傘を畳んだジョイトイを後部座席まで送ったあと、僕と無双祭さんは、図らずも顔を見合わせました。
 賢明な当ブログの読者の方は、既に状況がお解かりですよね?
 そう、最後にトランクに傘を仕舞う1人は、どのみち、ずぶ濡れになる運命なのです。
 以下、胸に血潮がたぎる熱き男達の友情物語です。
「……無双祭さん。先に傘を置いてくれ。俺が相合傘をして座席まで送っていく」
「いや、ゲン君。それでは君が、ずぶ濡れになってしまう。そんなことさせるわけにはいかない」
「しかし、このままでは埒があかない。彦根城の会場時刻に間に合わせるために、ここでの多少の犠牲は避けられぬかと。さぁ諦めて傘を置きなされ」
「だが……」
「元々、この安土城址は俺のたっての希望で来たスポット。言いだしっぺが責任を取るのが世の習い。ここは俺に仕切らせて下さい」
 僕の熱意に、とうとう無双祭さんが折れました。
「わかったよ。じゃあ、僕を座席まで送っていってくれ」
「御意」
 座席に乗り込んだところで、無双祭さんが僕に言いました。
「生き残るんだぜ、ゲン肉マン!」
「ああ。あの世で会おうぜ。無双祭マン! ……ギャァァァッッッ!」
 と、後半は、筆者が愛して止まないアレっぽくなりましたが(笑)、僕がびしょ濡れになる形で、問題は一件落着したのでした。めでたし、めでたし。
 え、ゲリラ豪雨ですか?
 彦根方面に10分ばかり車を走らせたところで、ピタリとやみましたよ。
 あー、10分くらい待ちゃ良かったよ。
 すっかり水も滴るいい男に変身した僕が運転する車は、いよいよ彦根市街へと突入しました。
 こんな茶番で1話にして申し訳なく思いつつ、次回に続きます。 (つづく)