小田原遠征(第2話)

 小田原遠征の旨を、さっそくジョイトイに通知します。
「おい、ジョイトイや。今度、小田原に行こうぜ」
「小田原かぁー?」
「なんでぇ、つれねぇ声を出しやがって」
「俺さ、前に三島に住んでいたときに、小田原の空手道場に通っていたから知ってるんだが、あそこは、そんな観光に行くような街じゃないと思うぞ。南口こそまぁまぁ栄えているけど、北口なんて、すぐに住宅街になるし、そんなに期待できないと思うがな」
 いきなり出鼻を挫かれた感じがしましたが、今から別の都市をリサーチする気力もなかったので、僕は小田原をゴリ押し。
「行く前から、そう言うなって。小田原城とかもあるから、あながち悪くないって。たぶん」
「まぁ、ゲンさんがそこまで言うなら行ってやるよ」
「すまねぇな。当日の詳細は、改めてメールするよ」
 ジョイトイから、なんとか参加の承諾を得た僕は、続けて無双祭さんのところへ電話をかけます。
「ねぇ、無双祭さん。今度、小田原行ってみない?」
「別にいいよ」
 さすが無双祭さん、話が早い。
 気を良くした僕が、矢継ぎ早に質問します。
「行くとしたら、小田原のどこがいい?」
「うーん……。小田原に限定されると、これといった場所が思い浮かばないなぁ。ゲン君にお任せするよ」
「そう? じゃあ、俺が適当にどこか見当をつけておくよ。じゃあ、また詳細は連絡するね」
 こうして、なんとか参加承諾を得たものの、2人ともに、『小田原に、ここぞといった観光スポットなし』、とのリアクションに、いささか焦った僕は、本屋に駆け込んで、観光スポットを探すことに。
 しかし、2人の言ったことを裏付けるように、『小田原』と銘打ったガイドブックは、どこにも見当たりません。よくよく探してみても、せいぜい『箱根』と銘打ったガイドブックで数ページ紹介されている程度。
 こいつは本当にとんでもねぇことになるかもしれねぇな。ただ最初のハードルが低い分、ちっとでも良いところがあれば、満足度は得られるかもしれない。
 そんなことを考えながらも、なんとか数箇所の観光できそうなスポットに目をつけた僕は、2人に、『3月18日決行』なる旨のメールを打ったのでした。 (つづく)