小田原遠征(第5話)

 城を下ったところで、僕らは来る途中にあった歴史博物館に立ち寄ることにしました。ここは城と同様、北条氏を中心とした小田原の歴史を紹介しているのですが、映像だとか、紙芝居だとか、なかなか凝った作りの展示物が多く楽しむことができました。
 見学を終えた僕らは、まだ見ていない場所を一回りしたのち、小田原城を出ました。
 そして目についたのは、行くときにも見たお堀に浮かんだボート群。
「せっかくここまで来たことだし、乗ってみるか?」
「お堀にボートで漕ぎ出すなんて、そうそう他所にはないから、けっこう楽しそうではあるな」
「強いていえば、男3人でボートに乗っているところを、観光客に見られるのが恥ずかしいが……まぁ取るに足らないことではあるね」
「じゃあ、男3人で乗ってもいいタイプの舟だったら乗ってみようか」
 そんなことになり、僕らはボートの係留所にいる係の人に訊ねて見ました。
「このボート、(男)3人でも乗れますか?」
「はい、どうぞ」
 あ、乗れちゃうのね。
 てっきり断られると思っていたので、狐につままれたような気持ちで、ボートに乗り、僕が腰を下ろしたときのこと。
 バキッ!
 盛大な音を立てて、ボートの席部分に亀裂が走りました。
 みんなの顔が凍りつきます。
 幸い係員に気付かれた様子はなかったので、僕らはアイ・コンタクトで以下のような会話をしました(気がします)。
(ちがうッ、俺が悪いんじゃないッ! 最初から壊れていたんだ!)
(事情はともあれ、損害賠償みたいな話になったら面倒臭ぇぞ。さすがにすぐに返却するのも怪しまれるから、とりあえず少しの間、乗ってきたところで、さっさと返してずらかろうぜ)
(浸水してきて、沈没とかならなければいいけどね)
 そんな具合で、いざ漕ぎ出だしてみたものの、最初のうちは、まったく力の加減ができず、周りに係留してあったボートをひとしきり押しのけてしまう始末。
「提督、うちの舟はもはや沈没寸前ですぜ!」
 意外なところで、予想以上のピンチを迎えた僕ら。
 どうなる、次回!? (つづく)