デッドリードライブ 〜諏訪篇〜(第2話)

 無双祭さんと旅の約束をしてから、10日程経過したある日の朝。
 僕は奥歯に激痛を感じて、目を覚ましました。
 余談ですが、一度眠ってしまった僕が、目覚まし以外の事象で目を覚ますことは、至って稀です(最近では例の大地震ぐらい)ので、相当の痛みであったとご理解下さい。
「グギャギャギャギャギャギャッ!」
 あまりに痛かったので、さっそく歯医者に行ってみたところ、驚愕(とまではいかないかもしれませんが)の診断が下されました。
「下の右奥に生えていた親知らずが虫歯になってますね。こうなってしまった以上は、抜かない限り痛みが消えることはないですよ」
 ここで高校時代に親知らずを抜いたときの辛い思い出が蘇るわけです。
 あー、確か抜歯した翌日から、2〜3日の間、出血が止まらなかったなぁ、と。
 しかし、抜かない以上は、痛みが消えることがないと言われたからには、これはもう選択肢は他にはないわけです。
「あ、じゃあ、抜いちゃって下さい」
 すると、先生から予想外の回答が。
「いえ、それが……。あなたの親知らずは、歯茎に埋もれているので、うちじゃ処置できないんですよ。1度、歯茎を切り裂いて、それから歯を抜き取って、歯茎を縫い合わせる手術になるので、口腔外科に行ってもらわないといけませんね」
「はい?」
「この近くだと、〇〇〇病院になりますかね。そちら宛てに紹介状を書いておくので、それを持って行ってみて下さい。早い方がいいと思いますよ」
「はい?」
 こうして、あれよ、あれよ、という間に、大病院に行かなければならないことに。この上なく気が重いわけですが、行ってみないことには、話が始まらないので、僕は勇気を出して大病院に電話することに。
 すると、想像以上に大病院は忙しいらしく、予約が取れたのは、2週間後のこと。
 すぐに診てくれりゃいいのにね。痛み止めで騙し騙し生活するのは、なかなか精神的に堪えるよ。
 と、ここで問題になってくるのは、例の無双祭さんとの旅のこと。
 果たして、このまま歯が痛い状況で旅に出て、楽しく行程が真っ当できるかということです。痛みで朦朧としながら、旅に参加したところで、自分がキツイのは、もちろんのこと、無双祭さん対しても迷惑をかけてしまう恐れがあります。話しかけても、リアクションが薄い……とかね。
 ここは事情を話して、企画を延期してもらう他あるまい。
 僕は無双祭さんに連絡をとることにしました。 (つづく)