デッドリードライブ 〜諏訪篇〜(第5話)

 5月8日、午前8時。
 無双祭さんが、車で僕の家付近まで迎えに来てくれました。普段、自分が車を出すことが多いせいか、たまに迎えに来てもらったのが、なんだか妙に嬉しかったことを覚えています。
「やぁ、どうも、どうも。今回は色々無理を言って申し訳ありませんでしたね」
 そんなことを言いながら、車に乗り込むと、無双祭さんは、意外な顔をしていました。
「あれ? 事故ったっていうから、もっとヘコんでいるかと思ったけど、そうでもないみたいね」
「ああ、まぁ人身事故とか物損事故なら、心が折れていたかもしれないけど、自分の車が壊れただけだからね。修理代も保険で全額出るみたいだし、一晩寝たら元気になりましたよ」
「さすがだね。まぁ良かったよ」
 こうして僕の自宅付近を出発した無双祭さん号は、国1バイパスを東進したのち、52号線を北上していきます。
 先述したように、どこかに遠征する際は、僕が運転することが多く、そちらに気を取られて、あまり景色を楽しむことなどできないのですが、この日は助手席だっただけに、よく走って見慣れたはずの52号線の景色も斬新に見えました。
 そんな事情もあったせいか、退屈に感じることはなく3時間ほどが経過し、僕らは諏訪までやって来ました。
 時刻も11時を過ぎていたので、僕は無双祭さんに訊ねました。
「ちょっと早いかもしれないけど、人気のある蕎麦屋だと混んじゃうかもしれないから、そろそろ昼飯にしない?」
「ああ、そうだね。俺もそう思うよ」
「どっか当てはある?」
「うん。実はこないだこっちに来たときに、雰囲気の良さそうな店を見つけたんだけど、ちょうど入れなかったものだから、そこにリベンジしたいんだ」
「それだったら話が早い。そこにしよう」
 僕は無双祭さんに連れられ、諏訪某所にある某蕎麦店に行きました。
 名前こそ忘れましたが(苦笑)、外観は古民家のような立派なたたずまいです。
 お、これなら期待できるかな。
 期待を胸に、僕らは暖簾をくぐりました。 (つづく)