デッドリードライブ 〜諏訪篇〜(第6話)

 店内に入り、席に案内されたところで、僕は『天ざる』を、無双祭さんは『おろしそば』+『春野菜の天ぷら』(だったかな?)を注文しました。
 オーダーしたものが届いたところで、さっそく食してみます。すると、さすがに無双祭さんが推した店だけあって、なかなかのお味。去年の5月から信州を訪れること3回目にして、ようやく美味い蕎麦が食えたとあって感無量でした。
 食事を終えたところで、次にどこに行こうかと、僕らはガイドブックを開いて検討します。
「ゲン君は、どこか行きたいところとかある?」
「ふーん、そうだねぇ……」
 ガイドブックをペラペラと軽く読み流したところで、僕は応えます。
「強いてあげれば、諏訪神社かねぇ。最近、親知らずとか、車がドッグ入りとか、悪い事が続くんで、神頼みしたいってのと、以前にキクチとNOVさんと行ったことがあるんで、もう1度行ってみたい気がするんですよ」
「ふーん、諏訪神社ねぇ……」
 僕の言葉を聞くと、無双祭さんは、あまり気が進まない様子。先述したように、僕も強いて挙げるならで、格別に行きたいわけではなかったので、強く押しはしませんでした。それに無双祭さんが、運転手である以上は、ある程度、彼の好みを観光地に反映させるべきというのもありましたからね。
 すると、このときの無双祭さんの決断が、僕らの旅に大きな影響を与えたのです。
後日、判明したことになりますが、この日、諏訪神社では『御柱祭』が行われており、倒木の事故が起こって2名の方が亡くなられたそうです。もし、そんな場所に行ったら、パニックは必至、下手すると僕らが犠牲者になる恐れすらあったので、行かなくて良かったと心底思いました。
 もしや無双祭さんには、預言者としての力が備わっているのでは? もし新興宗教とか創設するなら、僕を幹部として雇ってもらいたいものですね(笑)。
 と、そんな僕の下衆な野望はともかく、話を元に戻しましょう。
 結局、ここぞという観光スポットが思いつかなかった僕らは、1年前と同じように諏訪湖の畔で、たたずんだ後、飯田方面へと向かったのでした。 (つづく)